ビジネスパーソンと店員写真はイメージです Photo:PIXTA

近年、人手不足の加速などの課題に直面し、新たなシステムの導入やロボットによる自動化を試みる企業も少なくない。そのため、コンサルタント会社やメーカー各社が企業の悩みを解決する“ソリューション営業”に力を入れている。日本屈指の精密機器メーカー、キーエンス出身のコンサルタント・高杉康成氏によると、ソリューション提案は難度が高く、営業を成功させる鍵は「性弱説」にあると断言する。人は本来弱い生き物であり「難しいことや新しいことを積極的には取り入れたがらず、目先の簡単な方法を選んでしまいがち」という捉え方を指す「性弱説」。その捉え方が、ソリューション提案に欠かせない理由とは。※本稿は、高杉康成『キーエンス流 性弱説経営』(日経BP)の一部を抜粋・編集したものです。

ロボットに何をさせるべきか
じつは顧客も分かっていない

 ソリューション提案(ビジネス)の重要性が以前よりも増しています。賃上げ基調が旺盛な中、その原資を確保するために利益率の改善が必須だからです。ところが、このソリューション提案は難度が高く一筋縄ではいきません。ここではこのビジネス形態について、キーエンス流の「性弱説(編集部注/人は本来弱い生き物なので、「難しいことや新しいことを積極的には取り入れたがらず、目先の簡単な方法を選んでしまいがち」という捉え方)経営」の視点から見ていきましょう。

 ロボットなどを活用した自動化設備を設計・製作する企業を例に考えてみます。

「人手が足りなくて困っているのでロボットなどを活用して自動化を進めたい」

 これは、飲食店を営んでいる顧客から持ち込まれた依頼です。最近、人手不足からくるこの手の依頼が増えています。

 今までは顧客から言われた設備をそのままつくってきました。例えば、「タブレットを使った注文システムをつくりたい」というニーズに対しては、いろいろな仕様(どんなサイズのタブレットを使って、どんなボタンをつけるかなど)を確認し、システムをつくり上げてきました。こういったケースでは、顧客から出てくる課題が明確なため、欲しがっているものをそのままつくればよかったのです。

 ところが今回のようなケースでは、「どの作業を自動化すれば効率が上がるか」が自分たちはもちろん、顧客にも正確には分かりません。自動化をすれば効率が上がるという漠然とした思考が前提になっているからです。従って、顧客が抱える「本質的なニーズ(潜在ニーズ)」をしっかりと把握する必要があります。

 早速、この企業ではソリューション提案を強化することにしました。顧客が抱えているニーズの本質を聞き出し、それを解決する方法を見つけ出して顧客に提案し、採用してもらう活動です。

 ところが、いきなり壁に当たってしまいました。現状の営業担当者のスキルでは、顧客のニーズの本質をなかなか把握できなかったのです。なぜ把握できなかったのでしょうか。その理由を深掘りしてみましょう。