このパターンは面談が終わってから確認・指導するため、結果的に「後の祭り」となるケースが出てきます。冒頭の事例でも、上長にとって本当に重要な情報が予算状況だと決まっていたなら、あらかじめAさんに聞いてくるように指導しておくべきでした。

 加えて注意すべきは、Aさんのモチベーション低下です。きっちりと仕事をして帰ったにもかかわらず、上長との認識のすれ違いにより叱られる結果となりました。このようなケースでは、モチベーションや上司への信頼度が大きく低下します。

 教育という観点からも問題が残ります。本来であればAさんのヒアリング内容は称賛すべき出来です。上司が褒めることで当事者は自分の行動を正当化し、成長へとつなげるところです。にもかかわらず叱ってしまうと、本人にとって見れば、何が良くて何が悪いのかが分からなくなってしまいます。

 もう1点、面談の機会損失という面からも問題があります。面談機会というのは無限にあるわけではないのです。限られたチャンスで結果を出さなければ顧客が不満を覚えたり、競合に出し抜かれたりして面談の機会を失います。コロナ禍以降、面談機会の創出がそれまで以上に難しくなっている点からも、この視点の重要性は増しています。

 このように、直接的な商談としての機会に加え、部下の教育やモチベーション管理という観点からも、事後面談だけでは問題が多いのです。

面談の事前準備では
「ゴール」を意識する

 次に、図の左段「性弱説視点の『事前事後報告』」を見てみましょう。面談の前に報連相をする場を設ける方式です。

 事前報告で何をするかといえば、「事前準備状況」の確認が中心です。事前準備状況を細分すると、「面談シナリオ」「面談資料」「個人スキル」の確認となります。要は、「どんなシナリオを想定して、どんな資料を用意して、どういった個人スキルで臨むつもりか」の確認です。

 面談シナリオについては、制約の1つ目「時間の制約」、3つ目「コミュニケーションの流れによる制約」を考える必要があります。「話が脱線して時間が足りなくなっても、最低限この内容は持って帰ろう」というように、面談のゴールを意識して確認します。