資料については、シナリオに対してどういった準備をしているか、という目線で確かめます。必要な資料はその準備状況とクオリティーを確認。もし準備が遅かったり内容が不十分だったりする場合には、面談までに準備・修正させることができます。事後報告で資料の質の低さに気付いたとしても、既に面談は終わっていますよね。

 そして、最後は「個人スキル」の確認です。仮にシナリオと資料が妥当なものだったとしても、それらを正しく活用できるかは本人のスキルにかかっています。

 ここで役に立つのがロールプレイングです。商品・サービスの説明が必要な面談であれば、実際に顧客へ説明する場面のロールプレイングを実施。何らかのヒアリングが主体ならばヒアリングの練習をする。これにより、本人のスキルを確認するとともに、必要に応じて指導が可能となります。

 ちなみにキーエンスで有名なロールプレイングは、相当に高い頻度で実施されます。そしてほとんどの場合、事前報告の場が舞台です。

事前事後報告で実現する
メリハリのある教育

 このように、事前報告には面談のクオリティーを向上させるという点において、非常に大きな役割があります。そして、事後報告と組み合わせることでさらに大きな効果を得られます。先ほどの図の左下を見てください。事前事後報告を実施すると、事前に指導した項目を事後報告の場で確認し、できたものは称賛し、できなかったものは改めて指導するという、メリハリのついた教育ができます。

 冒頭の事例でも、仮に上長が事前に一言でも指導しておけば、事後に叱られた際、指導・指示を実践しなかった自分のミスだとAさんが自覚できます。その自覚が、自己改善への動機付けとなり、成長へとつながるのです。

 事後報告だけだと失敗した場合に、「何でやらなかったのか」「なぜできないのか」という、「結果への指導」となります。場合によっては結果責任を上司が追及しているだけにすぎません。何をやってくるべきか、何が苦手でどこを改善すべきか、どういった資料を準備すべきかなどを事前に指導してこそ、その結果に対して的確な指導ができるようになり、指導された側も納得感を持って受け止められるのです。