経営難がささやかれていた大手不動産ファンド運用会社、パシフィックホールディングス(HD)についに“救世主”が現れた。
中国の上場不動産会社などが出資する受け皿会社「中柏ジャパン」が、普通株約6億円、優先株468億円の計474億円の第三者割当増資に応じるというものだ。12月19日および2月27日に予定されている払い込みを経て、受け皿会社がパシフィックHDの発行済み株式総数の29%を握る第1位株主となる予定だ。
傘下リートへ自社開発した物件を売却することで急速に成長してきたパシフィックHD。だが折からの世界的な金融危機による信用収縮で、開発遅延や手持ち販売案件の売却遅れが発生。手持ち資産の減損処理などに追われ今期は250億円の最終赤字に沈む。保有物件の売却リストが出回るなど“窮状”ぶりが知れ渡っていた。
この7月に大和証券グループ本社との資本提携を発表したが、交渉は9月末で事実上決裂。その後、新たなスポンサー候補として、同業他社やファンド、外資系企業と交渉を進めていたが、先行き不透明を嫌気し株価は連日のようにストップ安となった。2006年に40万円を付けた株価は2000円台まで急落。株式時価総額は16億円にまで落ち込んでいた。
今回注目すべきは、なんといってもその支援スキームの特異性である。表向きのスポンサーとなる中柏ジャパンは、元産業再生機構COOの冨山和彦氏が率いる経営コンサルティング会社の経営共創基盤が、今回の出資のために設立した企業。
パシフィックHDでは「中柏ジャパンは中国による日本での不動産投資の橋頭堡であり、同社を通じて今後の事業のアジア展開への支援も得られる」とするものの、中国側の出資者の詳細は守秘義務契約を楯に明かされておらず、その内容は不透明だ。
金融筋によると、この投資スキームの背後には2000億ドルもの運用資産を持つ中国の政府系ファンド、中国投資有限責任公司(CIC)の姿が見え隠れするという。CICは、経営難に陥っているAIG系の生命保険会社、アリコ(日本法人はアリコジャパンの名前で展開)の買収にも名乗りを上げており、日本市場で急速に存在感を増しつつある。
今回のスキームで、やっとパシフィックHDはひと息つけそうではあるものの、それでもまだ資金調達額が500億円弱で十分か、という見方もある。今の市況では、保有不動産の価値が大幅に毀損しているのではないかという疑念も消えないうえ、これで信用補完ができなければ、再び資金繰りに窮するのは目に見えている。
パシフィックHDの趨勢は、融資借り換えに苦慮する傘下リートの日本レジデンシャル、日本コマーシャル両投資法人の命運をも左右する。一件落着までには、まだ「続き」がありそうである。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 鈴木洋子 )