どーいうこと?

 運転手席近くにいた乗客は、バスを放置して去っていく運転手に「俺たちを置いていくな」と叫んでいたが、少しすると諦めて1人、2人とバスを降り始めた。私も周囲を見ながらバスを降りた。最後に誰もいないバスが交差点に残された……。

 その後、乗客は近くにあったバス停に移動し、後続のバスに乗った。日本ではバスの運転手が不適切な言動をするとすぐにニュースになり、バス会社が謝罪するが、これはどうなるのか。他の乗客の冷静な対応を見ると、そんな大したことではないようにも見えるが。

やられっぱなしで耐える感覚も
いじめられて自殺することもない

 なんというか、彼らは己の喜怒哀楽に素直すぎる。運転手だけではない。道路や店舗で誰かが大声で喧嘩しているのは日常茶飯事で、カップルの女性側が男性を飛び蹴りしてたり、ショップの販促をする着ぐるみが取っ組み合いをしていることもあった。

 イケアのカフェテリアでは、セルフサービスのコーヒーの順番をめぐって女性客2人が口論を始め、ほどなく髪をつかみ合って暴力沙汰に発展した。なぜか後ろに並んでいた女性2人も参戦し、まわりが手をたたいてはやし立てる中、従業員2人が小走りにやってきた。

 仲裁に入るかと思ったら従業員は単に好奇心でやってきたようで、「けんかだ、けんかだ」と嬉しそうに傍観していた。

 中国人にとって、喧嘩は発散でありエンタメだ。夫婦喧嘩も、お互いが自分の正当性を主張するため、わざわざ人前でやるという話もある。

 客と従業員が上下関係なく大声で言い争っているのを見ていると、むしろ「お客様は神様です」が当たり前で、横暴な客にも笑顔で対応することを求められる日本のサービス業のほうが不健全に思えてくる。

 日本は「沈黙は金」「人前で怒ったり泣くのはよろしくない」的な価値観が強いが、これらのカルチャーゆえに「ストレスをためこんで悪化させる」文化を生み出しているように思える。