
大挙して日本にやってくる中国人観光客の個性的な立ち居振る舞いに、まゆをひそめる向きは少なくない。だが、彼らには彼らなりの行動原理があるのだという。2010年に7歳の息子・ソウを連れて中国に留学した経済ジャーナリストが、日中のリアルな違いを語った。※本稿は、浦上早苗『崖っぷち母子、仕事と子育てに詰んで中国へ飛ぶ』(大和書房)の一部を抜粋・編集したものです。
7歳でも気づく2つの国の違い
中国はやっぱり適当だった
日本は礼儀正しく、きっちりとしていて、秩序がある。
中国は「適当」の一言だ。中国人自身がそう言うんだから、悪口でもなんでもない。無秩序を逆手にとってごり押しもできるので、慣れるとある意味フレキシブルなのだが、ルール通りにやっていれば間違いないと思っている日本人からするとなかなかのハードモード。怒りっぱなしで日本に帰る日本人も少なからずいる。
人生経験が6年そこらのソウも、1カ月も経たないうちに日本と中国の違いに気づき、「中国人って何も気にしないよね」と語るようになった。
学前班(編集部注/小学校の勉強への橋渡しを行う1年課程のカリキュラム)にはクラス全員分のベッドがあり、ソウは「王子様みたいだ」と喜んでいた。けれどお昼寝中に汗びっしょりになっても、そのまま放っておかれるので、「あれ?」と思ったようだ。日本の保育園では保育士さんがこまめに汗をふいてくれたり、着替えさせたりしてくれていたのだろう。中国はこの手の細かい調整が苦手分野で(というより、日本がやりすぎるのかもしれない)、びっくりエピソードには事欠かなかった。
中国生活1年目の大型連休、ソウとプールに行くことにした。服のサイズが5号の私は、サイズの合う水着もなかなか見つからないのだが、一応デパートに行って「小さいサイズの水着はない?」と聞いてみた。店員は両手で裁縫のジェスチャーをしながら「縫って縮めればいい」と言い放った。私も言われた通りに買った水着を数カ所縫って幅を詰め、日本に帰国するまで数年間着用した。
チェーン店の料理が
店によって味が違うのは当たり前
最初の1年ほどは彼らの適当さに衝撃を受けたり憤慨したりしていたが、次第に「何が標準」なのか、わからなくなっていった。
中国のチェーン店の料理が、店によって、あるいは日によって味が全然違うことを中国人の友人に話すと、
「料理人の気分によって味が違うのは当たり前だ。失恋したときに塩をたくさん振って悲しみを発散することだってあるだろう。毎日同じ材料、分量、手順で作らないといけないなら何が面白いのか」