「日本ではいじめられっ子の自殺がなぜ起きるの?」中国人がどうしても理解できない、当然すぎる理由写真はイメージです Photo:PIXTA

日本人は言い争いや殴り合いを避けたがる傾向にあるが、中国人はまったく違う。15年前、中国に留学した経済ジャーナリストが伝えたい、中国人の価値観とは?※本稿は、浦上早苗『崖っぷち母子、仕事と子育てに詰んで中国へ飛ぶ』(大和書房)の一部を抜粋・編集したものです。

Wi-Fi開通で便利になった中国
実はXにもアクセスできる

 中国で暮らすようになって数年経つ(編集部注/筆者は2010年に、幼い息子・ソウを抱えて大連に留学した)とWi-Fiが使える飲食店、カフェが増え、初代iPadに子ども向けアプリを入れて、ネットに接続して遊べるようになった。

 Facebookのユーザーも2012年ごろ急に増え、中国から日本の友達とリアルタイムでメッセージを送りあえるようになった。2013年には自室にもWi-Fiが入った。

 中国はYouTubeやX(旧Twitter)、Facebook、インスタグラムといったアメリカのSNSにアクセスできないことになっているが、接続元をごまかすソフトウエアを使ってつなぐことができる。今では在中日本人の大半はこの方法で、日本にいるときと同じようにSNSを開き、LINEを使っている。特に苦労することなく、動画での通話もできる。

 日経新聞が2010年に電子版を始めたとき、海外にいた私は大喜びして契約したし(それまで海外で日本の新聞を配達してもらうと月に数万円かかっていた)、年末に紅白歌合戦を見たくてNHKが映るホテルに泊まったりしていたが、日本のコンテンツを入手するコストはその後、信じられないほど下がった。

 逆もまたしかりで、私は2023年、日本から中国の蘭州大学にオンライン留学した。中国にいる教師と各地にいる十数人の学生がウェブカメラで顔を合わせ、画面に表示されたテキストで毎日一緒に勉強した。

 私が中国で経験した苦労話の半分ほどは、今なら簡単に回避できる。日本を発つ前にプリペイドのSIMカードを買っておけば、中国に着いたその日から通話アプリで日本の友人と話し、地図アプリをダウンロードして日本食を売っているスーパーに買い出しに行ける。日本のコンテンツやアプリも難なく手に入る。

 でも、そういう世界だったら、ソウが中国のアニメを見たり、寮の他の留学生たちと交流する機会はそんなになかったかもしれない。私はクラウドソーシングで日本からライティングの仕事を受けて、小遣いに余裕のある生活ができたかもしれないが、いつまでも日本とのつながりに頼り、それまでの延長線を進むだけだったかもしれない。