何かを決める会議の場では発言が少なく、会議の後、あるいは決定後に陰で不満が出るというのも日本あるあるだが、不満や異論を先送りした結果、余計こじれることも少なくない。
日本語を勉強している中国人に「日本はなんでいじめがあるんですか」と聞かれたことが何度かある。「中国ではないの?」と聞き返したら、「中国もありますが、やられっぱなしでも耐えるという感覚はないし、子どもがいじめで自殺する話は聞いたことがない」という。
生きていくうえでは、中国人にならって感情に素直に動くほうが楽で、澱まない。そう気づいてから私は、どんどん空気を読まなくなっていった。

日本に帰国して久々に日本企業で働いたとき、会議の場で責任者が「せっかく皆集まっているんだから言いたいことは忌憚なく言ってほしい」と呼びかけた。額面通りに受け取って、本当に忌憚なかったのは私と、米国企業での勤務歴が長い男性の2人だけだった。
「ああ、そういえばここは日本だった」と我に返った。
礼儀正しい日本は好きだけど、感情を殺してまで場の空気を保ったり、秩序を守ったりする必要はない。苦しくなったら、あの日の運転手のように、バスを置いて職務を放棄して逃げてもいいんだよ、と思う。