お金を払う時にはQR決済、レストランではQRオーダーやタッチパネルで注文、バスに乗ったり公共の建物に入るには、スマホアプリを起動して画面を提示……IT先進国・中国では、社会がものすごい勢いでIT化されている半面、スマホが使いこなせず取り残される「高齢者デジタル難民」の問題が深刻化している。すでに問題が起き、解決策を模索している中国と、高齢化では先行する日本。同じ課題に対して協力しあうことはできないだろうか?(日中福祉プランニング代表 王 青)
中国ではデジタル化が進んだ結果、
スマホがなければ生きていけない状況に
今や世界の最先端といえる中国のITイノベーション。スマホ決済の普及を筆頭に、国民の生活はどんどんデジタル化されている。この流れは、新型コロナウイルスのパンデミックが始まってからさらに強まっている。例えば、個人の健康情報アプリである「健康碼(以下、健康アプリ)」。これはコロナ対策の中心的な役割を果たしているアプリで、濃厚接触者の追跡、PCR検査の実施状況、公共施設への入場、バスの乗車など、どんどん多機能・高機能化している。地域によっては、帰宅さえもアプリの認証が必要になっており、もはや「行動許可証」となっている。
中国で日々の生活を送るために必要なアプリはこれだけではなく、病院やレストランの予約、買い物など生活のあらゆる場面でスマホアプリが活用され、浸透している。今や、スマホがなくては生きていけない状況である。
このようにデジタル化が進み、加えて行動制限など厳しいコロナ政策が講じられている状況下で問題になっているのが「デジタル格差」。孤立する高齢者が生きづらい状況となっているのだ。2020年に『IT先進国・中国のコロナ禍で「高齢者置き去り」の悲痛、切符も買えない!』という記事を書いたが、事態はさらに深刻化している。