診察室でも「私も適応障害になったことがありますけど、今は元気に働けているので大丈夫ですよ」と、笑顔で患者さんに伝えています。

 メンタル不調は誰にとっても無縁ではないけれど、一度なったからといって、ずっと不調を抱えたまま生きていかなければならないわけではありません。今つらい方は、そのつらさがずっと続くわけではないということは忘れないでください。

ストレスへの対処は2つ
「自分」か「環境」を整える

 会社で働くということは、働いた分、お金をもらっているわけです。

 そして、就業規則には必ず始業・終業の時間、1日あたりの所定労働時間、週あたりの所定労働時間が定められています。決められた時間はしっかり働かなければいけないわけですから、もしも、その義務を満たせていないのであれば、体調を整えるために休むべきです。

 そのときには「自分を整える」ことと「環境を整える」ことの両軸で整えていきましょう。特に適応障害の場合、働くなかで発症したということは、働く環境のなかに何らかのストレスがあるということです。その場合、自分を整えてストレスに慣れるか、環境を整えてストレスを減らしながら慣れるかの2つしかないと思っています。

書影『産業医が教える 会社の休み方』『産業医が教える 会社の休み方』(中央公論新社)
薮野淳也 著、橋口佐紀子 構成

 そもそも定時で働くことがつらい体調の人は、すでにパフォーマンスが下がっています。下がった状態でそのまま働き続けることは、長い目で見れば、誰にとってもよくありません。本人もつらいでしょうし、会社にとっても長期的に生産性が下がり、ひいては社会のためにもなりません。

 体調不良があり定時で働くことがつらい、体調を理由にした欠勤が増えているといったときには、しっかり休んで100%の自分に戻ってから、その人がもっている能力を発揮してもらったほうが、自分も幸せですし、会社のため、社会のためにもなります。

 体調不良を理由に定時で働けないのなら、まずは定時で働ける体調を取り戻しましょう。そして、万全のパフォーマンスで会社に、社会に貢献しましょう。