50代男性「朝起きたら会社に行けなくなった…」仕事が順調な人ほど要注意!“中高年の危機”の対処法とは?【精神科医が解説】写真はイメージです Photo:PIXTA

1998年以降、働き盛りの中高年の社会人が自ら死を選ぶ傾向が強まっている。これは不況と経済的な停滞によるものだけではなく、ミッドライフ・クライシスが関係しているという。今回は精神科医のパントー氏が、50代で突然会社に行けなくなってしまったGさんのケースを通して日本の中年が陥るミッドライフ・クライシスについて解説する。※本稿は、パントー・フランチェスコ『しあわせの処方箋(Tips)~イタリア人精神科医 パントー先生が考える~』(あさ出版)の一部を抜粋・編集したものです。

順調に昇進してきたのに
なぜ心療内科へ?

 Gさんは50代のサラリーマンです。

 今まで会社と家族に対する思いいっぱいでがんばり、順調に昇進を重ね、家族と仲良く過ごしてきました。

 それが、いつしか、朝目が覚めたら、会社に行けなくなりました。

 理由について心当たりは一つもなく、単純に体が重い、動けない。頭痛と熱感があって、体がだるい。歩いてみると目眩がする。

 数日様子を見ても改善がないため、内科を受診されました。

 ところが、いくつかの検査を受けても特に身体的に異常がないと言われ、心療内科をすすめられたのです。

 Gさんは、自分がまさか心療内科を受診すると思っておらず、そもそもこの不調は心が原因とも思っていません。

 ですが、症状が続き、会社と奥さんのすすめもあり、やっと受診することになったのです。

 まずは安心してもらうため、Gさんに対し「患者さんとは思っていない」と、何回も声がけをしました。

 またうまくいかないこと、体の不調について語っていただくように促しました。

 Gさんは、ミッドライフ・クライシスの可能性があったため、まず会社の自分の人生における立ち位置を語ってもらいました。

 お話ししていただいた内容から、Gさんにとって最後に成し遂げた昇進は、逆にマイナスの変換点になったと判断しました。意外でしょうか?

 Gさんは、今まで昇進を成し遂げるために、人生のすべてを捧げてきたといっても、過言ではありません。

 ただ、それを得られたことで、「ええ!いつの間にかこんな年齢になってしまった。これまでの人生の選択は、本当にこれでよかったのだろうか?」――と、突然、人生のすべてを捧げても良いと思った昇進、責任のある立場の獲得が大したことに見えなくなり、未練の種が心にまかれてしまったのです。

 いつの間にか、歳をとったな、体力を失ったなと思うことも多くなり、今まで過ごした環境にいても、いてもたってもいられない状況に陥ってしまいました。