「サラメシはみんなのものになっていたんだな」
サラメシのディレクターになって、ようやくその夢をかなえることができた。テレビ番組である以上、いつかは終わる。それでも「行けるところまで行こう」と走り続けてきた。
ついに迎えることになった最終回を前に、石井さんは今どんな気持ちでいるのか。
「息をするのと同じくらい当たり前だったライフワークがなくなることに、まだ心が揺れています。スタッフたちも『やっと終わったー』と話していた1週間後には、『本当に悲しくなってきます』とこぼすような様子です。みんな命を懸けて作ってきたんですよ。他愛もないお昼ごはんに誰かの人生の本質が浮かび上がる、サラメシの魅力にとりつかれていたんでしょうね」
“ロス”に陥っているのは制作陣だけではない。SNS上にあふれる放送終了を惜しむ声に、石井さんは驚きと感謝の気持ちでいっぱいになった。思い返せば、地方の商店街でインタビューをしていると、サラメシのジャンパー姿を見つけて差し入れをくれる人や、「毎週見てます」と手を合わせて拝んでくれる人もいた。
「もはや僕たちよりサラメシ愛が強い人が日本全国にいる。サラメシはみんなのものになっていたんだなと気づかされました。今、こうして悲しさや寂しさを感じられるのもみなさんと歩んだ14年の歳月があったからで、本当に幸せなことだと思います」
湿っぽい雰囲気が苦手と思われる石井さんは最後に、「いやーでも、命を懸けるものが昼メシってなんかいいよね」と笑った。
(AERA dot.編集部・大谷百合絵)
※AERA dot.より転載