年収を上げたい。経営者になりたい。超一流企業で働きたい。海外で働きたい。転職によってこうしたキャリアアップを目指す方は以前からたくさんいらっしゃいます。

 その一方で最近では、転職を通じていわゆるキャリアアップではなく、まさに「自分の道を進もう」と決めた方もいます。人生は一度しかありません。今回は、「自分の道」を進んだ方の事例を紹介しながら、本当に幸せな「35歳からの転職」を考えます。

大手電気メーカーから農業へ
年収は2割減でも幸せな毎日

 大学卒業後から10年あまり、大手電気メーカーで営業と営業企画を経験してきたAさん。決して会社に大きな不満があったわけではありません。しかし、調整業務ばかりの毎日で、「本当にこれで良いのだろうか?」と思うところはありました。大組織で働くやり甲斐もある一方、一生をかけてやるべき仕事か大いに悩んでいたのです。

 昔から食には興味があったAさん。せっかくなら安全なものを食べたいと思い日頃から食べるものには気をつけていました。オイシックス社のサービスのような食材ネット販売のビジネスにも興味はひかれていましたが、やはりどうしても農業そのものがやりたいという思いが強くなりました。妻もAさんのことはわかってくれ、また志向が近いこともあり、一念発起。体に良いものだけを作り、自分の好きな方に届けるという想い重視で、農業をスタートしたのでした。

 最初の2年は苦難も多かったものの、両親にも応援してもらい、3年目からは軌道に乗るようになりました。収入は前職と比べて2割程度下がりましたが、ここから年収を上げていけるイメージもできています。世間では「農業は甘くない」とよく言われ、その意味もわかる一方、サラリーマンを真剣にやってきた人間がやれば必ずできるという確信も持っています。逃げの農業はうまくいきませんが、攻めの農業であればいくらでも可能性があると感じています。

 Aさんの場合は、妻が賛同してくれたことが本当に良かった点でしょう。誰でも妻の反対があれば、はじめられないこと。今では生産者として、友人やそのまた友人らに、喜んでもらえるのが本当に嬉しいと話します。いまでは彼らに口コミでリピーターになってもらっているそうです。