米経済の「痛み」発し始めた消費者と企業Photo:Bloomberg/gettyimages

 米消費者の間でパニックが起き始めている。

 マサチューセッツ州に住むダン・アームストロングさん(63)は、ビル管理者で警備員のアルバイトもしているが、3週間ほど前から大きな不安を感じ始めた。友人や同僚との会話の中で、大量解雇や物価上昇に関する話題が占めるようになったからだ。これまでそんな話をしたことはなかった。最も安く冷凍食品やガソリンを入手できる情報を交換し始めたという。

 アームストロングさんは14日朝、現金を確保するため、高校生の娘のクラス旅行をキャンセルした。2026年春に予定されているこのスペイン旅行まで毎月322ドル(約4万8000円)の積み立てが必要だった。シングルファーザーのアームストロングさんは洋服を買ったり、週に一度の楽しみだった宅配料理を注文したりすることも控えている。

「今後数年間、状況はますます厳しくなりそうだ」と彼は言う。「ほぼ全てのものを節約している」

 ドナルド・トランプ米大統領が仕掛ける貿易戦争など急激な政策変更により、米国民は経済に対して悲観的になっている。確定拠出年金(401k)は減り、インフレ期待は上昇している。旅行や住宅リフォームといった余分な支出を控えるようになった。

 ミシガン大学による3月の消費者信頼感指数(速報値)は57.9と、2月の64.7から大きく低下した。民主党支持者に限って見ると、2008~09年の金融危機時を含め、過去最低を記録した。共和党支持者のマインドも悪化しているが、トランプ氏の政策による短期的な経済的痛みは価値があると多くは考えている。トランプ氏は9日、景気後退の可能性を否定しなかった。