
【セル・サン・ドニ(フランス)】森に囲まれた広大な工場で、欧州の再武装とウクライナ向け兵器補給を支えるミサイルが組み立てられている。
冷戦終結後の米軍事力への依存から欧州が脱却できるかどうかは、フランス中部にあるこのMBDA工場のような施設と、長らく緊急の案件ではなくなっていた生産の早期拡大にかかっている。
問題は、同社や欧州が生産能力を十分に拡大できるかどうかだ。
ドナルド・トランプ米大統領は欧州各国に防衛費の増額を求めてきた。米国がウクライナへの武器供給を一時的に停止したことで、欧州にとっても人ごとではないとの危機感が強まり、主体的に兵器を確保すべきとの認識が高まっている。
ロシアのウクライナ侵攻開始以降、欧州各国は軍事支出を拡大し、域内の防衛関連企業は受注が伸びている。だが各社は需要に追いつくのに苦戦し、欧州は依然として米国からの輸入に頼っている。
欧州ミサイル生産大手MBDAのエリック・ベランジェ最高経営責任者(CEO)は、「今は時間と量とスピードが重要だ」と述べた。「われわれは歴史的瞬間を体験している」
同社は製造基盤の強化を急ぐ。17日には生産拡大に向けて2023~28年に27億ドル(約4000億円)を投じると発表。受注残は約400億ドルに上る。
ベランジェ氏は、新型ミサイルの生産量が年末までに23年比で2倍に増えるとの見通しを明らかにした。