世界の滅亡を救った一冊の本とは?
再び顕在化する世界的な危機の兆候
かつて第三次世界大戦の勃発を阻止した一冊の本があるのをご存じでしょうか。書名は『八月の砲声』(バーバラ・W・タックマン著、ちくま書房)。第一次世界大戦が、小国のテロリストの一発の弾丸から世界大戦にまで拡大していった経過を、淡々と描いたノンフィクションです。
1962年、ソ連が米国の目の前に位置するキューバに核ミサイル基地を建設し、ミサイルを配備するという情報を得たジョン・F・ケネディ米大統領は、この『八月の砲声』を読んで、一発ミサイルを打ち返しただけで世界大戦が始まり、米ソだけでなく世界が全滅する危機に陥る可能性が高いことに思い至りました。そして軍部を説得し、さらにソ連指導者のフルシチョフと交渉して、核ミサイルを撤去させることに成功しました。これが、「世界が最も核戦争に近づいた日」と言われたキューバ危機の顛末です。
なぜ、この著書を引き合いに出して、こんな古い話をするかといえば、第一次大戦前の状況と今の時代がとても似ていることに気付いたからです。
最初にそのことに気付かせてくれたのは、世界的心臓外科医からの情報でした。実は「アナペイン」という長時間効果が持続する麻酔薬が日本で欠乏していて、ほとんど在庫切れの状態だそうです。世界の医学情報に通じるその外科医は、「欧州諸国がこの数カ月間にアナペインを買い込んで備蓄していることが影響している」と、医薬品業界からの情報を教えてくれました。
つまり世界では、大人数の外科手術を行うための準備が進められているということが推測できます。調べてみると、日本側でも外交や自衛隊の関係者はその兆候をかなり掴んでいました。
トランプ大統領の再選により、彼の豪腕でウクライナ停戦が決まりそうだという見方が出始めました。しかし、ウクライナに同情しつつ何もしない日本人と比べて、NATO諸国や1月20日まで政権を掌握するバイデン米大統領は、現状を楽観視していないのではないかと思います。少しでもウクライナが納得できる形で戦争を終結すべきだと考え、まだしばらくロシアとの攻防が続くことを念頭に置いているのかもしれません。
そして欧米諸国は、世界がそうした方向に向けて動き、世界大戦に発展して、大量の負傷者が出るという可能性をも視野に入れているのではないでしょうか。その表れが、アナペインの備蓄と在庫切れという現象です。
危機感の引き金になったのは、24年11月19日にバイデン大統領がウクライナに与えた長距離ミサイルの使用許可でした。バイデン政権は今まで、ロシアを刺激しないため、ロシア国内を攻撃可能な長距離ミサイルの使用を許可していませんでした。しかし、トランプ氏が大統領選に勝利したため、おそらくはウクライナ戦争の継続、あるいは失地回復を狙って、長距離ミサイルの使用を許可したと考えられます。