学校の授業で学ぶ歴史には、偉人たちの輝かしい功績や「すごい」エピソードが数多く登場します。しかし、どんな人物にもそれだけでは語れない一面があります。歴史をひもとくと、「すごい」人の中にも、思わず目を疑うような「やばい」行動や選択が、数多く記録されているのです。
そんな「すごい」と「やばい」の両面から、日本史の人物のリアルな姿に迫るのが、『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』。本原稿では、本書の内容を引きながら、日本史上、「最も頭のいい人物」ベスト3を紹介する。(ダイヤモンド社書籍編集局・三浦岳)

【歴史好きなら納得する】日本史上「最も頭のいい人物」ベスト3Photo: Adobe Stock

第3位:後白河天皇(平安時代)――したたかな立ち回りの天才

「頭のよさ」は、知識だけでは測れない。

 誰を味方につけ、どう動かすかという判断力もまた、重要な知性である。とりわけ、状況を読み替えながら立ち回る「したたかさ」も、その一つのかたちといえる。

 平安時代末期の天皇・後白河は、まさにその力に長けた人物だった。

 彼は自ら前に出るのではなく、武士たちを巧みに動かすことで、権力を維持していった。以下は、『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』からの引用である。

 鳥羽天皇の四男だった後白河は、父と長男・崇徳の仲が悪かったおかげで天皇になりました。
 ムカついた崇徳が後白河にケンカをしかけるも、後白河は武士の平氏と源氏を味方につけ、勝利します――『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』より

 しかし、彼の本領はその後にある。

 でもその後、平氏が源氏との戦いに勝ってイキりはじめると、これにムカついた後白河は、負けて伊豆(静岡)に流罪となっていた源頼朝を味方につけ、平氏を滅亡させたのです。――同書より

 さらに状況が変われば、後白河は味方同士すら争わせる。

 しかし、頼朝がイキるのもムカつくので、今度は頼朝と弟の源義経を争わせて武士たちを裏であやつりました――同書より

 つまり、後白河はまず、皇位をめぐって対立した崇徳上皇に対して、平氏と源氏を味方につけて勝利し、その後は勢いを増した平氏に対抗して源頼朝と結んで平氏を倒す流れをつくり、さらに源頼朝が力を持てば今度はその弟の源義経との対立を利用する、というように、そのときどきでアクロバティックに敵と味方を組み替えた

 武士が台頭し、権力構造が激しく揺れ動く時代にあっても、後白河がその中心に居続けたのは偶然ではない。柔軟に立ち回りながら主導権を握り続けたところに、彼のしたたかな知性が表れている。

第2位:織田信長(戦国時代)――世界を構造で理解した革新者

 戦国時代の武将・織田信長のすごさは、単なる戦の強さではない。未知の情報を「構造」として理解し、そこから新しい発想を生み出す力にある。

 当時の日本ではほとんど知られていなかった西洋の知識に触れたとき、信長はその本質を瞬時に見抜いた。

 西洋の天文学・地理学の知識がなかった当時の日本で、初めて地球儀を見た彼は、短時間で「地球は丸い」こと、「日本がアジアの東端に位置している」ことを理解し、宣教師たちをびっくりさせたといわれています。――同書より

 さらに、彼はそれを国家運営に応用した。

 彼は西洋文化を単なる「物珍しいぜいたく品」として扱うのではなく、「価値ある知的システム」として国づくりに利用しようとしたのです。――同書より

 知識を「点」で終わらせず、「構造」として捉えた思考が、信長の頭のよさである。さらに、それを制度や戦略に落とし込み、時代の常識そのものを塗り替えていった点に、彼の真価がある。

第1位:小栗忠順(江戸時代末期)――未来から逆算した官僚

 そして1位は、江戸時代末期(幕末)の幕臣・小栗忠順。彼の頭のよさは、「未来を前提に現在を考える」という点で群を抜いている。

 当時、日本では攘夷思想が広がっていたが、小栗はまったく逆の発想に立っていた。これからの時代に必要なのは、外国を排除することではなく、学び、取り込むことだと見抜いていた。

 黒船来航により日本が開国し、混乱した幕府を支えた天才エリート官僚が、小栗忠順です。
「外国人を追い出せ」という攘夷思想がはびこるなか、「日本の未来のためには、逆に外国から学ぶべき!」とアメリカへ行き、日本の外交・経済の近代化を推し進めました。――同書より

 その構想は、具体的な形として結実する。

 アメリカから帰国した忠順は、「日本も自分たちの力で軍艦や機械をつくれるようにならなければ」と考え、フランスと協力して「横須賀製鉄所」を建設します。
 これは日本で初めての本格的な近代工場で、のちの横須賀造船所のもとになりました。
 忠順の行動は、日本の「ものづくり」の始まりでもあったのです。――同書より

 小栗は攘夷が世の主流の中で近代化の必要性を見抜き、それを具体的な産業基盤として実装した。日本の進むべき方向を示し、それを現実のかたちにしたのだ。その結果、日本の近代化の起点が築かれた。未来を見据え、その実現のために常識にとらわれることなく必要な手を打ったこの思考の深さと実行力こそが、小栗忠順の頭のよさである。

 知識を構造として理解する力、人間を動かす力、そして未来から逆算する力。頭のよさとは、単なる知識量ではなく、現実をどう読み、どう変えるかにある。歴史を動かしてきたのは、まさにそうした「頭のいい」人物たちだったのである。

(本原稿は『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』に関連した書き下ろし記事です)