「チームを疲弊させないリーダーが、やっていることがあります」
そう語るのは、これまでに400以上の企業や自治体等で組織変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、「人が辞めていく職場」に共通する時代遅れな文化や慣習があると気づきました。
それを指摘したのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』。社員、取引先、お客様をうんざりさせる「時代遅れな文化」を指摘し、現場から変えていく具体策を紹介。「まさにうちの会社のことだ!!」「すぐに実践してみます!」と、とくに現場リーダー層を中心に多数の反響があり話題に。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「部下が辞めないリーダーの特徴」を紹介します。

【もう部下が辞めない】チームのメンバーを「疲弊させない」リーダーがやっていること・ベスト4Photo: Adobe Stock

ダムは放水しないと決壊してしまう

 やっていてつらいだけの仕事、もはや目的を見失い惰性で続けているだけの慣習が、どの組織にも1つや2つは存在するだろう。いわば「仕事ごっこ」と化した仕事や慣習。

 これらをやめられない組織では次から次に仕事が増える。そして容量オーバーになる。メンバーは疲弊する。仕事をやめられない組織が、人に「辞められる」組織になっていく。

 ダムは適度に放流しなければ、やがて水が溢れて決壊してしまう。そうならないよう仕事も放流が必要だ。そのために筆者は「る」で終わる「3つの“る”」の行動を推奨している。

「やめる」
「振り返る」
「変えてみる」

 この3つだ。

賞味期限が切れたものを「やめる」

 やめたい仕事、やめられる仕事は声を上げてとっととやめる。形骸化したルールはとっととなくす。

 そのためには仕事の「賞味期限」を意識しよう。
 どんな仕事やルールにも賞味期限がある。

 たとえばダブルチェックやトリプルチェックの作業。人的ミスが発生しないよう、2人、3人で確認をする。当初は意味があったかもしれない。しかしあるとき仕事そのものが自動化され、もはや人的ミスが入る余地がなくなったとしたら。その瞬間、チェック作業は役目を終えたはずである。天に召されていいはずだ。

 にもかかわらず、今なおチェック業務が行われ続けていたりする。いったい何のお遊戯会なのだろうと思いきや、当の本人たちにやめる意識はない。やめようと声を上げる発想さえない。

 どんな仕事やルールも、生まれた当初は役割を持っている。ところが時代の移り変わりや環境の変化に伴い、役割を終えることがある。すなわち賞味期限が切れる。その賞味期限切れに気づかずに仕事やルールを温存し続けることは、腐ったものを食べ続けるのと同じだ。関わる人々の健康をじわりじわりと蝕む。

 なんのためにその仕事やルールが存在するのか。それらはもはや賞味期限切れしていないか。当事者同士で再確認してみよう。

期限を「決める」

 とはいえ、やめ慣れていない組織ほど仕事やルールをやめることに躊躇する。「何かあったらどうするんだ?」などの批判も容易に想定される。

 そこで、試しにいったんやめてみる期限を決めてみよう。

「月次報告書、試しに今月は出すのをやめてみたらどうでしょうか?」

「週次のチェック業務、試しに今月いっぱいやめてみませんか?」

 このように、半ば強制的にやめてみる体験を皆でしてみる。

やめてみてどうだったか「振り返る」

 やめてみてどうだったか、問題がないかを確認する場を設けよう。

 最初は不安だったが、やめてみても意外と誰からも文句も言われなかった。そのようなことはたくさんある。こうして、やめられた成功体験を組織に増やしていこう。

ゴール・目標・やり方などを小さく変えてみる

 最後に、やめるまでいかなくても、やり方を「変えてみる」のもアリだ。

 たとえばあなたのチームが、あと500万円の売上を必要としているとする。しかし今の状態では達成できそうにない。ならば手段を変えてみてはどうだろう。

「デジタルマーケティングなどの新しい手法を使ってみてはどうでしょう?」

「他社との協業で実現する方法は考えられないでしょうか?」

 このように、これまで通り気合い・根性・足で稼ぐ営業スタイルではなく、新しい手段を提案してみよう。あるいは既存顧客へのアプローチを諦め、高単価の新規顧客の開拓と獲得に集中する。個人顧客ではなく法人顧客を開拓するなど、顧客セグメントを変えるやり方も考えられる。

 モーレツな組織ほど、目的と手段がいつの間にかごちゃ混ぜになっていて、無自覚に同じ方法で突っ走ろうとして袋小路に迷い込みがちだ。しかし、じつは手段を変える余地があるかもしれない。そこに皆で気づくためにも、小さくでもやり方を変えてみよう。

 お堅い組織であればあるほど、変える発想がまるでなかったりする。「変えていいんだ」「変えられるんだ」。その小さな成功体験を、あなたの半径5m以内から創っていこう。

(本稿は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です。書籍では他にも、「人が辞める組織」を変えるためにリーダーができることを多数紹介しています)