いつも謙虚で控えめなのに、なぜか一目置かれる人がしていることとは? 世界で話題となり、日本でも20万部を超えたベストセラー『「静かな人」の戦略書』の著者、ジル・チャンが待望の新作を刊行。謙虚な人ならではの作戦を伝授する『「謙虚な人」の作戦帳――誰もが前に出たがる世界で控えめな人がうまくいく法』だ。台湾発、異例のベストセラーとなっている同書より、特別に内容の一部を公開する。

【心が疲れたら】メンタルが一発で強くなる「小さな習慣」ベスト1ジル・チャン氏 Photo by Wang Kai-Yun

「客観的に自分を見る」習慣をつける

 韓国の精神科医ヤン・ジェジンとヤン・ジェウンはこう言っている。

 私たちは他人について、あの人は几帳面で、あの人は仕事ができる、あの人は舞台に上がるとスーパースターのように見えるなど、特定の側面から相手を判断し、敬意を抱く。しかし、それは彼らのすべてではない。たいていの場合、接する機会が多ければ多いほど、相手の欠点が目につくようになるし、尊敬の程度も低くなる。

 一方で人は自分とはつねに接している。自分の内面や考え方、意思決定のプロセス、そして自分の弱点まで熟知している。

 だからこそ、自分を尊敬するのはとても難しい。

 もっともよい方法は、「客観的に自分を見る」能力を磨くことだ。

 理性的に自分を観察し、外的な刺激と内面の変化との相関関係を見極め、少しずつ客観的な評価を下せるようになろう。

 当然ながら、人の長所を見つけたり、人を尊敬したりするのは悪いことではない。

 だが重視すべきは、学びのプロセス(進歩の度合いなど)であって、結果(業績や年収)ではない。

 もし他人への敬意がたんなる成果にもとづくものなら、あなたの自己評価はネガティブになる可能性が高いだろう。(中略)

「事実」をリストアップする

 あなたの気持ちや解釈はどうであれ、ものごとには客観的な事実というものが存在する。たとえば面接に合格した、厳しい状況を無事に乗り越えた、クライアントから注文を受けた、などがそうだ。

 心理学者のサンディ・マン博士は、ニセモノ思考(インポスター症候群。自分を過小評価してしまう心理状態)に襲われたときは、そうした客観的な事実とあなたの考え、さらに、それを成しとげることを可能にしたあなたの能力を書いてみることを勧める。

1:「プラスのこと」があったとき

【事実】面接に合格した。
【ニセモノ思考】ただ運よく面接官が、私が得意な分野の質問をしてくれたからだ。ほかの人は私よりも能力が高そうに見えたし、面接官は私を選んだことをすぐに後悔するだろう。
【可能にした能力】このポジションは、私の過去のキャリアや経験を生かすことができるし、私は面接のために十分な準備をした。

2:「マイナスのこと」があったとき

【事実】クライアントが発注前に厳しいクレームを入れてきた。
【ニセモノ思考】私の商品に不満があったのだ。今回注文してくれたのは、時間がないなどの理由があったからで、きっともう次はない。
【可能にした能力】クライアントがクレームを入れてきたのは、私にはそれをどうにかする力があると思っているからだ。そうでなければ注文をキャンセルするはずだ。そうしないということは、現段階では私の商品が彼らにとっては最善の選択なのだ。

 客観的な第三者としてこれらのケースを見て、「ニセモノ思考」と「可能にした能力」を比べると、どちらが大きな原因となっているように思えるだろうか?

 こうやってリストアップすれば、自分を肯定しやすくなるのではないだろうか。

(本記事は、ジル・チャン著『「謙虚な人」の作戦帳』からの抜粋です)