トランプ氏が進める規制緩和、規模は歴史的新次元Photo:Win McNamee/gettyimages

【ワシントン】ドナルド・トランプ米大統領は、米国の近代史においてかつてない規模の規制緩和を推進するという公約を実行に移している。環境保全に関する規制や銀行に対する監視の大幅緩和、暗号資産(仮想通貨)に絡む障壁撤廃、バイデン前政権が導入したエネルギー生産に対する規制の撤回などが迅速に進められている。

 規制緩和の規模が最大ともいえるのが環境保護局(EPA)で、わずか1日で米国の環境政策に関する31件の緩和措置を発表した。これには発電所や石油・ガス産業、電気自動車(EV)、廃水に関する規則が含まれる。

 液化天然ガス(LNG)輸出企業の米ベンチャー・グローバルは3月初旬、ルイジアナ州のプロジェクトに180億ドル(約2兆7000億円)を投資すると発表した。トランプ政権がバイデン前政権によるLNG輸出許可停止を解除したことを受けた動きで、これにより新規プロジェクトや拡張計画への道が開かれた。ダグ・バーガム内務長官はルイジアナ州の施設で働く労働者を前にした演説で、トランプ政権は「官僚主義や連邦政府という重荷を労働者や企業から取り除く」と述べた。

 規制緩和を巡っては、トランプ一族の積極的な関わりが目立つ暗号資産業界ほど早くから活気づいた分野はないだろう。米大統領選以降、暗号資産の取引は急増した。ここ数週間では、トランプ一族が暗号資産取引所バイナンスの米国部門への投資を巡り交渉したことが報じられた。別の暗号資産取引所、クラーケンは米先物取引プラットフォームを15億ドルで買収することで合意した。

 トランプ氏の規制緩和の動きは広範囲に及ぶ。証券取引委員会(SEC)はバイデン政権時代の気候変動関連の開示規則から後退する姿勢を示し、連邦預金保険公社(FDIC)は大手銀行の合併に対する監視を強化したバイデン政権時代の政策を撤回した。また、内務省と住宅都市開発省は連邦政府所有地での住宅建設を促進するため、規制の合理化を目指している。

 トランプ氏の一連の動きは「規制緩和政策という点において、新たな次元」を示している。第1次トランプ政権で働き、現在はリバタリアン(自由至上主義者)系シンクタンクのケイトー研究所でエネルギー・環境政策研究ディレクターを務めるトラビス・フィッシャー氏はそう指摘する。同氏はトランプ氏について、「ロナルド・レーガンよりも大胆に動いている」と述べた。