トランプ氏顧問、影の実力者はこの人昨年のアイオワ州党員集会で勝利したドナルド・トランプ候補とビンス・ヘイリー氏
Illustration: WSJ; Brian Snyder/Reuters

【ワシントン】米トランプ政権には挑発的な言動をする人々がそろっている。彼らはケーブルテレビのニュースに頻繁に登場し、ソーシャルメディア上で攻撃的な姿勢を取ることで著名人になった。

 ビンス・ヘイリー氏(58)はそのような人物ではない。

 ホワイトハウスの国内政策会議(DPC)を率いるヘイリー氏は、脚光を浴びることを好まない。ほぼ休眠状態になっている自身のX(旧ツイッター)アカウントに投稿したのは1度だけで、インタビューにもめったに応じない。インターネット上には彼の写真がほんのわずかしかない。

 しかしヘイリー氏を知る20人余りへの取材によれば、知名度の低さとは裏腹にその影響力は大きい。彼は2016年の大統領選以来トランプ氏のために働いてきた一握りの信頼されているアドバイザーの1人だ。トランプ氏のスピーチライターを長年務めており、トランプ氏の考えを伝えるとともに保守的な有権者を取り込む政策案を見分けるすべを身に付けている。

 人工妊娠中絶などの問題についての共和党の立場を形作り、24年の大統領選期間中に暗号資産(仮想通貨)や反DEI(多様性・公平性・包摂性)に関するトランプ氏の取り組みの基盤を築いたとして、同僚から評価されている。また「フリーダム・シティー(自由都市)」「国立英雄公園」といった型破りなアイデアをトランプ氏が生み出すのを手助けしてきた。

 トランプ政権1期目にDPCのディレクターを務めたジョー・グローガン氏は「トランプ大統領の思考過程や、彼に受ける政策、彼が好きなもの、彼が好きにならないものを、これほど見抜いている人物を他に思い浮かべることができない」と話す。

 トランプ大統領は2カ月前の就任以降、数十件の大統領令に署名してきたが、ヘイリー氏はDPCのトップとして、政策担当の大統領次席補佐官を務めるスティーブン・ミラー氏と緊密に連携し、これら大統領令の作成を支えてきた。ヘイリー氏はトランプ氏が選挙活動中にした公約が確実に守られるようにする任務を負う。DPCはホワイトハウス西棟内で、非公式に「Office of Promises Kept(公約順守室)」とさえ呼ばれている。

 政権1期目でトランプ氏の上級顧問を務め、今もホワイトハウスと緊密な関係を保っているケリーアン・コンウェー氏は「ビンス(ヘイリー氏)やスティーブン・ミラーは政策通だ。これら政策通の人々には勢いがあると感じている」と話した。