
「ヘイ、Siri(シリ)! ヘイ、アレクサ! ビートルズの『イエスタデイ』をかけて。だって、新しいAI機能は昨日にはもう出てるはずだったんだから」
筆者は音声アシスタントにまつわるジョークを作るのが得意になったが、肝心のオチは笑えない。テクノロジー大手2社が生成人工知能(AI)機能を大げさに宣伝し、提供を約束しつづけているが、予定通りに約束を果たすことはできないようだ。
AIの時代へようこそ。といっても、「人為的な未完成(Artificial Incompletion)」という意味でのAIだが。
これまでの経緯をざっと振り返ろう。アマゾンは2月のイベントで、生成AI機能を搭載して会話がより自然になったという音声アシスタント「アレクサ+」を発表した。ステージで行われたデモンストレーションで、アレクサ+はウーバーへの複雑な注文を処理したり、ユーザーのメールやスケジュールについて質問に答えたり、セキュリティー端末「リング」で撮影した何時間分もの映像をチェックしてかわいらしい犬を見つけたりした。
アマゾンはアレクサ+の提供を3月に開始すると発表した。しかし3月31日の時点で、筆者を含むレビュアーは誰もテスト版を受け取っていなかった。アレクサ+のユーザーも一人も見つからなかった。ユーザー探しには引き続き努める。
アマゾンの広報担当者は早期アクセスによるサービス提供が3月最終日に始まり、「少数の顧客」のみに提供されていると話した。同担当者は顧客の具体的な人数は答えず、「当社の目標は5月の時点で数百万人の顧客がアレクサ+を利用していることだ」と述べた。食料品の注文やイベントのチケットを見つけるといった、デモンストレーションを行った機能の多くは、初回の提供には含まれていない。
アップルはどうか。同社は3月、音声アシスタントSiriのAIによる機能強化の一部について、提供までに予想以上の時間がかかると発表した。この機能強化は、モバイル端末向け基本ソフト「iOS18」の一部として昨年6月に発表され、iOS18は9月に公開されている。広報担当者は今後1年以内にこれらの機能が提供されるとの見通しを示した。
アップルはこの「よりパーソナルなSiri」がスケジュール上の過去の約束をスキャンして、コーヒーショップで以前会った人の名前をユーザーが思い出せるようにする仕組みを紹介するiPhone(アイフォーン)16 Proの広告を流したが、これを中止し、自社のユーチューブのアカウントからも消した。