
【ワシントン】ドナルド・トランプ米大統領は、中国政府に対して強硬姿勢を示す一方で、他国とは関税引き下げに向けた交渉の余地を残した。貿易戦争を巡る一連の動きを受けて多くの国が新たな関税による打撃を避けようと奔走する中、世界各地で混乱が広まっている。
関税が恒久的なものか、あるいは交渉の余地があるのか問われたトランプ氏は、「その両方とも事実だ」と述べた。
トランプ氏の発言を受け、各国政府や産業界は9日の期限を前に自力での対応を迫られている。9日には中国、日本、ベトナムなどの国々に高関税が課される予定で、米政府当局者らによれば、50カ国以上の政府がこれを前にホワイトハウスと接触。トランプ氏との取引を模索し、各国政府は同氏をなだめようとしている。
米政府は5日、事実上全ての国からの輸入品に一律10%の関税を課した。今週予定されている追加関税は、貿易面で問題があると政権が見なす国々を標的にしている。一方でトランプ氏に近い補佐官らは、関税引き下げ交渉の可能性について相反するメッセージを発している。
ピーター・ナバロ米大統領上級顧問(通商・製造業担当)は7日、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)に寄稿し、トランプ氏による相互関税について「これは交渉ではない」と述べた。一方でスコット・ベッセント財務長官は、日本との「交渉を開始する」とツイートした。
経済諮問委員会(CEA)のスティーブン・ミラン委員長は、「相反する見解が出てくるのは、誰もが意見を持っているからだ」と説明。「問題はない。意見の相違は集団思考を避ける方法だ」と述べた。ミラン氏は関税引き下げ交渉の可能性については明言を避けた。
ある大手テクノロジー企業の関係者は、企業や特定製品を関税から除外するような兆候は見られないとし、救済措置があるとすれば他国との2国間交渉を通じてになるだろうと述べた。だがこの見通しも不透明で、米国との交渉を模索する外国政府は、協議の在り方やその構造を把握できていないと事情に詳しい関係者は述べている。