そうすれば、冒頭の例のように、本当は重要な人物なのに派遣のままにしているケースなどが、すぐに見つかる。さらに、その人物がいなくなった場合を想定すると、その人物が交換していた資源がなくなることが、組織の情報フローや生産性にどのような影響を与えるかを知ることができる。

 これが難しければ、家族でやってみるといい。妻が、夫が、いなくなったとしたら、どんな資源が失われ、家族関係のネットワークがどう変わるか。頭の中でシミュレートしてみるといい。その過程で、家族のメンバーが家族という「組織」にどのような貢献をしているかを知ることもできる。職場の分析はこれの応用編である。

あの人がいなくなったらどうなる?
人財を手離さない“手立て”を講じよ

 企業の人事評価について、これまであまり注目されてこなかったのは、その人物の貢献がなかったとしたら、組織はどうなるかという分析だ。仮に非常に能力が高い人がいたとしても、同じ資源を扱える人がもう1人いれば、その人の「その組織」での価値は半減するのだ。逆に唯一無二ならば、その人を手放すことは組織にとって痛手になる。したがって、手放さないための待遇を考える必要が出てくる。

 むろん、組織は常に変容している。仕事の質や量も、時間とともに変わるだろう。貢献できる社員や重要な資源の種類なども変わってくる。したがって、このような脳内シミュレーションは定期的に、できれば毎週1度やるべきである。

 そうすると、自分が組織の中に占める位置と重要性も、客観的に把握しやすくなるはずだ。

 そして本来ならば、それを組織の全ての社員が行い、その考えを議論し、共有することで、組織の頑健さと仕事の効率性を飛躍的に高めることができるはずだ。

 筆者は、この夏にビジネススクールに赴任する予定だが、そこでこの考えを、多くの企業で、より強力に実践できるためのプログラムづくりに着手するつもりである。