食べる時はたいてい奥のテーブルで、参加者の目につかないようにしている。それでも見る人は見てしまうのだ。私は照れ笑いを浮かべて、「ええ、まあ……」と、ごまかしておいたが。
もっとも最近は長野地方を添乗員の舞台としているので、三芳はご無沙汰もいいところなのが残念。以前は群馬県の前橋付近で活動していたので、三芳は庭のようなものだった。
それでも長野は長野でタダ飯処というのはワサワサあるのだ。
という次第で、添乗員は収入がグッと少ない、けれどもお腹はパンパンなのだ。
土産を買えば買うほど…
添乗員の“懐が潤う”旅の裏ルール
ずいぶん昔に岐阜から京都に訪れるツアーの添乗業務についた時のこと。観光バスで岐阜から京都へと赴いた。3日間にわたって嵐山や清水寺など京都の名だたる観光地をめぐった。
そして3日目。これから岐阜に帰るという最後の京都の地で土産物店へと寄った。もともとこのツアーの参加者は土産物店の類いに寄るたびに両手に買った荷物をぶら下げてバスに戻るという人が少なくないのであった。
土地柄というものもある。都会の人は土産に執着しないが、ローカル色の強い地に暮らす人は、その逆の傾向となる。
その最後に立ち寄った店というのが、また品ぞろえがすごかった。参加者たちも、これで京都とお別れということで、また一段と買い物心に火がついたのであろう。
旅に出ると買い物に目がなくなるという人は多い。友人、知人、そして近所の人たちへと何くれとなく買う人がいる、そういう人は自分の分も買うのかしらんと思ってしまう。
やがて、その店の主人と思おぼしき女性が私を呼んだ。何ごとかと行ってみれば、「たくさん買い物をしてくださったお礼です」と紙包みをよこすではないか。
中にはお金が入っていた。まだ経験が浅かった私は、たまげたものだ。そしてまた、喜びましたとも。添乗員というのは、こういう余禄もあるのかと思いを新たにした。
その後、添乗経験を重ねていくと、この店のような例は数え切れないほどあった。そればかりか売上に応じてパーセントの手数料をくれるというところまであるのだ。
そういう店で参加者がけっこうな量のものを買うと、私の懐にもそれなりに入る。そうなると、その手の土産物店に寄るのがウハウハの1つとなった。
ただし上記のような土産物店には難点がある。一期一会といっていいくらいに再びそこに行くことはめったにない。そこが添乗員のつらいところなのだ。