
関税は米国の労働者を助けると宣伝されているが、実際はどうだろうか。結局、力ある者や政治的なつながりを持つ者が優遇されるのだ。これが、最も負担の大きい関税措置の適用対象からスマートフォンやさまざまな電子機器を除外したドナルド・トランプ米大統領の決定の主なメッセージである。
米税関・国境警備局(CBP)は11日、トランプ氏のいわゆる「相互関税」を免除される製品をリスト化した通知を出した。中国からの輸入品に課される相互関税は145%に上る。除外措置の対象は、スマートフォン、ノートパソコン、ハードディスクドライブ、コンピュータープロセッサー、サーバー、メモリーチップ、半導体製造装置などの電子機器だ。
CBPの通知によって、これらの製品の関税率は大幅に引き下げられることになる。米誌バロンズの計算では、2024年の輸入では3850億ドル(約55兆円)相当が例外扱いになる。これには中国からの輸入品1000億ドル相当、つまり中国からの輸入額の23%が含まれる。新たに免除となる中国からの輸入品に課せられる関税率は20%になる。
これらの免除措置は、現代の生活必需品の一つであるスマートフォンの大幅な価格上昇に直面していた消費者にとって、良いニュースだ。2400ドルのiPhoneなど考えられないだろう。しかし最大の勝者は、海外でこれらの製品を組み立て、少なくともトランプ氏に政治的にひいきされている限りは免除措置を受けられる巨大企業だ。
アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)はそうした勝者の1人であり、デル・テクノロジーズのマイケル・デルCEO、エヌビディアのジェンスン・フアンCEO、ヒューレットパッカード(HP)や台湾積体電路製造(TSMC)の経営者および株主も同様である。彼らを批判するつもりはない。彼らの仕事は株主の最善の利益を追求することであり、可能なら関税の対象から除外してもらうのも仕事のうちだ。一部の企業は免除を求めていなかったかもしれないが、免除を受けるプロセスが不透明なため、ワシントンの利権に関わる人々には都合がいい。