米名門大を揺さぶるトランプ政権、知られざる実行部隊Photo:Andrew Lichtenstein/gettyimages

 米コロンビア大学の暫定学長はすでに辞任に追い込まれていた。だが試練はそれで終わらなかった。

 連邦助成金を巡る緊迫した交渉のさなかに、政権の圧力を受けて辞任した4日後、カトリーナ・アームストロング氏は首都ワシントンで政府の弁護士から3時間にわたる証言録取を受けた。弁護士はアームストロング氏に対し、学内のユダヤ人学生を「反ユダヤ主義」から守るために十分手を尽くしたのかと厳しく問いただした。

 追及に対して具体的な回答を避けると、弁護士はアームストロング氏の答えが「全く要領を得ない」とし、彼女のリーダーシップのスタイルには「困惑する」と述べた。

「明らかに賢明な医師であるあなたが、反ユダヤ主義の具体的な出来事になるとなぜ記憶が曖昧なのか、どうしても理解に苦しむ」と弁護士は言った。

 4月1日の証言録取の際、同席した弁護士で、厚生省の高官を務めるショーン・ケベニー氏は、米国のエリート大学をここ数週間、根底から揺るがしているほぼ無名の政府タスクフォースの一員だ。この組織はコロンビア大学やハーバード大学などの一流教育機関に対する何十億ドルもの助成金を標的にし、全米の大学に影響が波及している。現在はコロンビア大学を同意審決と呼ばれる政府の監視体制の下に置くよう迫っている。

「反ユダヤ主義対策タスクフォース」と呼ばれるこの組織が掲げる目標は、「学校や大学キャンパスにおける反ユダヤ主義的な嫌がらせ(ハラスメント)を根絶すること」だ。この使命は昨年、パレスチナ支持の抗議活動が大学キャンパスを混乱させたことに起因する。だが同タスクフォースはその活動を行う過程で、入学や採用における人種的優遇の廃止など、高等教育機関の見直しを求めるMAGA(「米国を再び偉大に」)運動支持者の願望に沿う形で、大学の文化を幅広く標的にしている。

 タスクフォースを率いるメンバーは、トランプ政権が高等教育機関に財政面の攻撃を仕掛けているため、前例のない影響力を持つようになっている。こうした攻撃は、第2次世界大戦中に米政府が大学に研究助成金を投じ始めて以降、他に類を見ないものだ。トランプ政権は少なくとも7大学から計110億ドル(約1兆5700億円)以上の資金を引き揚げるか、凍結している。

 攻撃手法や関与する機関はさまざまだが、最大の狙いはドナルド・トランプ大統領が選挙期間中に述べたように、極左から大学の支配権を奪うことだ。