ガザを米国のリゾートにする、荒唐無稽「トランプ案」の事情【池上彰・増田ユリヤ】トランプ米大統領(中央)は2月4日、米ワシントンのホワイトハウスでイスラエルのネタニヤフ首相(左)と会談した Photo:Anna Moneymaker/gettyimages

ガザを米国のリゾートにする

増田 第2次トランプ政権の発足を翌日に控えた1月19日、イスラエルはハマスとの間で締結した停戦合意を発動しました。当のトランプ米大統領は2月4日、イスラエルのネタニヤフ首相との会談で「ガザは米国が『所有』し、統治する」と主張しました。あまりにも荒唐無稽で、ガザの人たちの意向を無視した方針です。

池上 トランプ氏は180万人のガザの人々をエジプトやヨルダンに移住させ、米国が所有して開発し、「中東のリヴィエラ」、つまりリゾートにすると述べています。これには驚きました。

増田 ガザ住民はもちろん、エジプトやヨルダンが受け入れるはずもありません。現に2月11日にトランプ氏と会談したヨルダンのアブドラ国王は、「病気の子ども2000人を受け入れる」としつつも、この方針に反対しています。

池上 にもかかわらず、なぜそんな話が出るのか。これは第1次中東戦争の際、ヨルダンがヨルダン川西岸を、エジプトがガザを占領していたためです。トランプ氏としては「責任を持って全員引き取れ、広い砂漠には受け入れる余地があるだろう」ということでしょう。

増田 ガザからパレスチナ人を追い出そうという思惑に加え、トランプ氏はヨルダン川西岸のイスラエルによる入植も止めるつもりはないのでしょうね。

池上 オバマ政権のときは米国が強くイスラエルに入植行為をやめるよう要請していたので、ネタニヤフ氏との関係は悪化していました。ところがその後に誕生した第1次トランプ政権では止めなかったために入植が進みました。