
中国・四川省に住む3児の母、ツァオ・リリさんは、かつては世界中の製品を好んで使っていた。だが今では国産品を購入している。
数年前にホンダ車を手放し、中国・理想汽車(リ・オート)製の電気自動車(EV)に乗り換えた。激化する貿易戦争を受け、米アップルの「iPhone(アイフォーン)」ではなく、中国の華為技術(ファーウェイ)製のモデルを使うことを決めた。また今年に入り、中国のアニメ映画「ナタ 魔童の大暴れ」を劇場で2回鑑賞した。そのチケットの売り上げは、同作品が21億ドル(約3000億円)という記録的な興行収入を達成するのに貢献した。
スマートフォンからファストフードに至るまで、主要な米国ブランドは、中国で地元のライバル企業に急速にシェアを奪われている。ツァオさんは、瑞幸珈琲(ラッキンコーヒー)、ファーウェイ、スポーツウエア大手の安踏体育用品(アンタ・スポーツ・プロダクツ)、ファストフードチェーンの蜜雪氷城(ミーシュエ)といった中国ブランドを次第に受け入れるようになった一人だ。これらの企業は、中国市場における米国ブランドの支配力を侵食している。
「もはや外国ブランドにこだわる必要はない」とツァオさんは語った。
ドナルド・トランプ米大統領の中国との関税合戦の激化により、中国の消費者がさらに国内ブランドに向かう可能性がある。トランプ氏の関税発表後、福州を拠点とするスーパーマーケットチェーンの永輝超市は、中国企業に店頭の商品棚を占有するよう声明で呼びかけた。「『中国製』の星の光を集め、国内市場を照らす銀河系を作ろう」
また中国は先週、米国からの映画の輸入を制限すると発表した。観客がすでに国内作品に傾倒しつつある中国市場で、ハリウッドにとって重要な夏の映画シーズンを前に締め付けを強化した。
激しい競争
ナイキ、スターバックス、俳優のトム・クルーズなど、世界中で人気の高い米国ブランドの多くは、中国でより新しい企業との競争に直面している。これらの企業は米国ブランドと同じ土俵で勝負を挑み、長年にわたる米国の優位性とソフトパワーに食い込んでいる。
ナイキは3月、中国での四半期売上高が前年比17%減少したと発表した。同月、テスラの中国国内販売台数は12%減少した。BMW、ポルシェ、アップル、スターバックス、ロレアルはいずれも、かつては四半期ごとに繰り返されていた中国での成長が売り上げ低迷に転じたと投資家に警告している。