YouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」で、メンタルの病気について発信し続けている、早稲田メンタルクリニック院長の益田裕介医師。本記事では、日韓累計40万部を突破したベストセラー『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』(キム・ダスル著、岡崎暢子訳)の邦訳1周年を記念して、益田裕介医師に気分とメンタルの関わりについてインタビューを行った。本記事では、発達障害を持つ人々の中でも女性特有の悩みについて精神科医目線から解説する。(取材・文 ダイヤモンド社書籍編集局 工藤佳子)

【性被害も】発達障害の女性が直面する「怖いトラブル」について人気精神科医が解説「空気」が重視されるのが女性のコミュニケーション Photo: Adobe Stock

“女性独自”のルールに苦しむ

――先生のYouTubeでは、女性の発達障害に関する動画がとても再生されていますよね。実際、患者さんから「会社でこんなことで困った」という声も多いのでしょうか?

益田裕介(以下、益田)まず、女性同士のコミュニケーションで苦しむことが多いです。特に、女の先輩から嫌われるってパターン。やっぱり空気が読めないからですよね。お世辞も言わないし、身だしなみもちょっとズレてることがある。地味なら「地味でムカつく」、派手なら「派手でムカつく」、とにかく目をつけられやすい。

 あと、40代の未婚女性に「結婚されないんですか?」みたいな「今聞く?」といったことを平気で聞いちゃう。タイミングも内容も完全にズレてる。そういう“天然っぽさ”が逆に男性社員にウケてしまって、また女性陣から嫌われる……みたいな流れもよくあります。

――女性独特のルールから外れてるように見えちゃうんですね。

益田 日本社会って、やっぱり男社会なんですよ。文化的な基盤が男性にとって生きやすくできてる。だから、同じことをしても男性は許されるけど、女性は許されない

 たとえば、女性がノーメイクで寝癖のまま出社したら「え?」って思われる。でも、男性なら寝癖がついててもさほど気にされないでしょう? 文化やルールが全然違いますよね。そういう意味で、女性の方が“こうあるべき”のルールが圧倒的に多いんです。

“いじめ”や“性被害”に遭うことも

――発達障害のタイプにも違いがあるのでしょうか。

益田 そう。たとえば「受動型」と「積極奇異型」っていう分け方があります。

 受動型はエヴァンゲリオンで言えば綾波レイみたいなタイプ。無口で受け身、あまり能動性がない。一方で積極奇異型はアスカかな。感情を抑えるのが苦手で、すぐに相手を好きになったり、ベタベタ触っちゃったり、とにかく感情が表に出まくるタイプ。

――そういう環境で、発達障害のある女性はどう振る舞えば、少しでも楽になると思いますか?

益田 正直、周りに合わせるしかない部分は大きいです。合わせ方を覚えるっていうか、「みんなと同じ服を着る」「同じ話題に乗る」「自分の意見は控えめにして、要所でだけ出す」みたいな工夫が必要になります。

 あとは、媚びるべき相手には媚びて、基本的には“聞き役に徹する”。本当に、周囲の空気にうまく溶け込む力が求められるんですよね。

――そう考えると、積極奇異型の方が職場では目立ちそうですね。

益田 そうですね。でも、受動型の人はあまり嫌われないけど、そのぶん仕事を押し付けられたり、影で悪口を言われたり、性被害に遭いやすかったりします。あと、パワハラ上司に目をつけられることも多い。

 たとえば「なんでお前は喋らないんだ!」って怒鳴られる。周囲は「この子はそもそも喋るタイプじゃない」と分かってるのに、そういう空気が読めない上司だけがキレて、状況がぐちゃぐちゃになる