福祉の支援が必要な場合も

――AIを使う以外にはあるのでしょうか。

益田 あとは福祉の支援も大事ですね。たとえば、仕事ができない場合は生活保護や障害年金、障害者手帳といった制度を活用することもあります。日常生活が厳しい人には訪問看護やヘルパーさんが入ったり、就労移行支援などの施設に通って、生活リズムや人間関係の練習をすることもある。

 実際、発達障害でこういった支援が必要な人は結構多いんです。しょっちゅうミスをしてしまって、普通の職場では働けない。たとえば動画編集を在宅でやればいいじゃないかって言われても、実は難しい

 細かいところまで丁寧にやるのが苦手だったり、LD(学習障害)を併発していて、テロップの漢字をいつも間違えてしまうとか。そういうのを許容できる職場ならいいけど、普通の職場じゃなかなか難しい

 LDって実はけっこう多くて、グラデーションがあるんですよね。足し算はできるけど、掛け算になると途端に分からないとか。分数の概念がまったく理解できない人もいます。でもそういう人が接客は得意だったりする。

 だから、得意不得意のギャップが激しくて、生きづらくなることも多い。詐欺にあいやすいとか、情報に踊らされやすいとか、そういう問題もあります。

メンターが“相場観”をくれる

――益田先生のYouTubeやご著書ではメンターの存在が重要だと指摘されていましたね。

益田 そうそう、「メンター的な存在」がいるといいですよね。「この人だったらこう言うかな」って思える相手がいると、判断の軸ができる尊敬している先輩とかでもいいし、有名人でもいい。あまり理想を高く持たなくても、「あの人だったら今日は無理しないかな」って思えるような、“相場観”をくれる人がいると助けになります。

 僕自身のメンターは、生きてる人だといろいろいますけど、歴史上の人物だとフロイトが好きですね。あれだけ失敗してもくじけない。ああいう姿勢を見てると「偉いな」って思える。こういう時、フロイトならどう考えたのかな、って思えたりもします。

 だから、学びを続けながら、焦らず自分のペースで積み重ねていくしかないんですよね。

益田裕介(ますだ・ゆうすけ)
早稲田メンタルクリニック院長。精神保健指定医、精神科専門医・指導医
防衛医大卒。防衛医大病院、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院(復職センター兼務)、埼玉県立精神神経医療センター、薫風会山田病院などを経て、早稲田メンタルクリニックを開業。YouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」を運営し、登録者数60万人を超える。患者同士がオンライン上で会話や相談ができるオンライン自助会を主催・運営するほか、精神科領域のYouTuberを集めた勉強会なども行っている。著書に『精神科医が教える 親を憎むのをやめる方法』(KADOKAWA)、『精神科医の本音』(SBクリエイティブ)、『【心の病】はこうして治る まんがルポ 精神科に行ってみた!』(扶桑社)、『眠れなくなるほど面白い 図解 メンタルの話 メンタルの悩みとギモンを専門医がすべて解決!』(日本文芸社)などがある。