頭をかかえる女性写真はイメージです Photo:PIXTA

発達障害の人たちの物事の受け止め方や感じ方、つまり「見ている世界」を理解し、コミュニケーション方法を変えることで、ともに生きることが少し楽になる。そんなテーマで送る第2回は、「ミス」について。ADHD(注意欠如・多動症)の人は、単純なミスを繰り返してしまうことがあります。これは“脳の特性”によることが多く、本人の努力で完全に克服するのは困難なことも。本人たちの特性を理解し、サポートしてあげることのできる第三者の存在が欠かせません。その方法を解説します。(精神科医 岩瀬利郎)

※本記事は『発達障害の人が見ている世界』(岩瀬利郎著)から抜粋・再編集したものです。

「不注意」や「多動性・衝動性」から
ミスを繰り返しがちなADHDの人

 発達障害の中でも、比較的症例の多いことで知られているADHD。

「注意欠如・多動症」という日本語の名称の通り、「不注意」「多動性・衝動性」が特性としてよく知られています。

 注意散漫で忘れ物をしたり、仕事でケアレスミスをしたりといった失敗を連発しがちなうえに、注意の持続も苦手なので、細かい仕事や同時進行する仕事(マルチタスク)をこなせず、話を聞きもらすことも多々あります。

 遅刻しがちだったり、片付けが苦手だったり、物事に段取りをつけてこなすことができなかったりするのも、多くの場合不注意が原因。そのときそのときの思いつきで行動するため、結果を考えずに行動したり、危険な行動に出たり、話があちこちに飛んだりと、周囲からは軽率に見えてしまうかもしれません。衝動買いなどの浪費や暴言などにもつながりやすく、子どもの場合は、授業中でも立ち歩いてしまったり。

 また、ADHDの人は絶えず体のどこかを動かし、じっとしていられないことがあります。「不注意」も「多動性・衝動性」も多くの場合、成長とともに緩和されていきます。ただし、大人になっても一定程度は残ることがあり、努力で改善することに限界があるのです。

 ここでは、そんな「不注意」が原因で叱責され、自信を失ってしまっている人の例を紹介します。身近な人、あるいはあなた自身にも当てはまるようであれば、ぜひ、そうなってしまう理由と、対応の仕方を参考にしてみてください。