YouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」で、メンタルの病気について発信し続けている、早稲田メンタルクリニック院長の益田裕介医師。本記事では、日韓累計40万部を突破したベストセラー『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』(キム・ダスル著、岡崎暢子訳)の邦訳1周年を記念して、益田裕介医師に気分とメンタルの関わりについてインタビューを行った。本記事では、発達障害の診断を受けた後の治療について精神科医目線から解説する。(取材・文 ダイヤモンド社書籍編集局 工藤佳子)

精神科における
治療の“3本柱”
――発達障害と診断された場合、どのような治療が行われるのでしょうか?
益田裕介(以下、益田) 精神科の治療って、基本的に3本柱なんですよ。薬物療法、カウンセリング的な心理的アプローチ、そして環境調整。この3つを組み合わせてやっていく形です。
まず薬物療法ですけど、これはADHDには効く薬があるんですね。コンサータとかストラテラとか、集中力を上げたり、衝動性を抑えたりする薬を使います。ただ、ASDには効く薬がないので、薬物で直接どうこうというのは難しい。
じゃあASDの人はどうするかっていうと、もう“学習”なんです。カウンセリングというよりは「こういうときはこう振る舞おうね」っていう行動パターンを一つずつ教えていく。
たとえば「話の流れを無視して、いきなり自分の話を始めるのは避けたほうがいい」とか、そういう社会的な暗黙ルールですね。そういうのを一つずつ覚えていくしかないんです。100なのか1,000なのか、1万なのか……本当に果てしない作業です。
――ものすごく果てしなくて、時間がかかるように感じますね。
益田 でも、カウンセリングって何かっていうと、学習によって人格が成長し、自分で不安や困難を乗り越える力をつけていくものなんですよね。つまり、学習でしかない。だから、果てしない。
だからこそ、効率よく学習するっていう視点が大事になってきます。今はYouTubeとかAI、本などを活用して、個人に合った学習プランを組むことができる時代です。たとえば、自分が怒られたエピソードをAIに説明して「なぜ怒られたのか」「どこが失礼だったのか」を尋ねると、AIが分析してくれたりします。
ただ、AIはこっちの都合のいいことを言いがちなので、ちょっと批判的に使わないと危ないんです。最近は論文を引いてくれるAIやDeep Research系のものも出てきているので、そういうのを上手に活用できるといいですね。患者さんでも使っている人は多いです。
――たとえばどんなことを聞くといいでしょうか。
益田 最初は支持的精神療法っていって「褒めてください」みたいな軽いやりとりから入るのがいいと思います。愚痴を聞いてもらう感じで、「今日つらかった」って言ったら「それは大変でしたね」とか返してくれる。それだけでもけっこう救われるんですよ。
そこから一歩進んで、認知行動療法的な使い方もできます。「今日こんなことがあったんですが、認知の歪みを指摘してください」と聞いてみると、「それは過度な一般化ですね」とか、「白黒思考です」と返ってきて、それに基づいて行動プランも立ててもらう。
スピード感が全然違うし、日々の学習には本当に有効です。ただし、やっぱりズレたり、自分に都合のいいこと言ってきて陰謀論に走りやすかったりすることもあるので、「こういう使い方してますけど大丈夫ですか?」と主治医に確認しながら使うのが理想です。