取材を続けるなかで、ホーユーの従業員だという方々から「何も聞かされていない」「仕事に出てこなくていいという連絡が急遽あっただけで、詳しい事情が分からず困惑している」という話が聞かれた。一方で、一部の現場では食事提供が続けられている拠点もあるなど、すべての現場がストップしているわけではなかった。情報が錯綜(さくそう)するなか、混乱は全国各地に及び、新聞やテレビも連日状況を報じることとなった。
報道が先行するなか、数日後ついに山浦社長が報道陣の取材に対して状況説明に応じた。「食材価格や光熱費、人件費などの高騰が大きな負担となり、2022年には全国で100か所を超える施設への食事提供を停止した。直近の契約先は約150か所あり、その半数程度で営業を停止することとなったが、別の事業者へ引き継いだ施設も一部ある。500人を超えるアルバイト・パートに対する給与未払いが発生している。今後、破産手続きの申し立てを行う予定で、従業員は解雇する見通し」という説明だった。
コロナ禍に加え、各種コストの上昇で経営環境が厳しさを増し、「給食業界はこのままでは破綻(はたん)する」とまで語った山浦社長だが、以前から財務内容が悪化していたホーユーの運営体制に問題はなかったのだろうか。
コストの高騰が
追い打ちをかける
9月初め、各地で給食や食堂での食事提供を突如ストップした株式会社ホーユー。コロナ禍で事業を取り巻く環境が急変し、業況の低迷が続いた一方で、従前より県や市などから給食業務を受託する手法には問題を抱えていた。
公共施設における食堂運営は、一定期間の事業を一般競争入札により受託することとなる。大手や地元の同業者との価格競争が厳しくなるなか、大幅に低い価格で落札を重ねていたことが、事業停止に至った要因の1つだろう。受注先行で請負件数を増やすことにより実績は積めるものの、不採算となる案件もあり、受注体制そのものに課題があったことがうかがえる。近年は大手飲食チェーンや宅配業者などによる給食事業への参入もあって競合がさらに激化するなか、仕入れのスケールメリットも限定的となっていたようだ。
過年度より欠損を計上して債務超過の状態が続き、仕入れ先への支払い遅延を散発していた。このため、中小企業再生支援協議会(現・中小企業活性化協議会)に支援を要請するとともに、金融機関に対する借入金の返済条件の緩和を受けて経営再建に努めていたが、資金繰りは抜本的には改善しなかった。