その後、コロナ禍は落ち着きをみせ、利用者は回復しつつあった。しかし、提供先のニーズに対応した各種食材の価格高騰のみならず、運営に伴う光熱費、食事を作る調理スタッフ、栄養士の人件費の増加など、コスト負担の上昇により収益の悪化に拍車がかかっていた。欠員補充のために正社員の調理師や調理補助のパートを全国各地で複数名募集するなど、近年は早朝や夕方以降の時間帯を中心に、人材難が慢性化していたと見られる。

 このため、メニュー構成の見直しや役員報酬の削減などの合理化にも取り組んでいたが、そもそもの入札請負価格が低かったため資金繰りに余裕はなく、相次ぐ食材の値上げなど、各種コストの高騰が追い打ちとなった。

給食業界の
厳しい経営環境

 当初、帝国データバンクの取材に応じた代表は、「給食事業を取り巻く環境は非常に厳しく、自社努力だけではどうすることもできなかった」と語った。帝国データバンクが調査した「学校給食など『給食業界』動向調査(2022年度)」(2023年9月8日発表)では、国内で従業員や学生向けの食堂運営、給食サービスを手がける企業の34%が赤字であることが分かった。

 前年度と比較して減益となった企業を含めると、業績が悪化した企業は6割を超え、給食事業者の多くが厳しい経営状況を強いられている。さらに、コスト上昇分を「まったく価格転嫁できていない」給食事業者は15%を占め、取引先との価格交渉が難しいと嘆く声も聞かれた。

 学校給食法の対象外となる高校などの学食や給食の提供事業では、落札した給食事業者がその予算内で食材調達や調理を行う。ホーユーにおいても、生鮮食品や加工食品など各種食材の価格、光熱費、人件費が、入札時点の想定を大きく上回り、価格改定をスムーズに行うことも難しく、不採算となるケースがさらに増えたと見られる。

 2022年以降、国内経済は長年のデフレからインフレに転じており、価格転嫁が進まない企業は収益悪化を余儀なくされている。こうした状況下、入札案件で他業者と比較して極端に低い価格を提示する事業者と契約する場合、契約期間が満了するまで事業を適正に遂行できるのかという判断基準をあらためて検討し、価格のみならず安定供給の観点に、より重きを置いた選定が重要となるだろう。