遺産分割は「録音」が命綱! もめごとを防ぐためにやっておくべきこと
相続は誰にでも起こりうること。でも、いざ身内が亡くなると、なにから手をつけていいかわからず、慌ててしまいます。さらに、相続をきっかけに、仲が良かったはずの肉親と争いに発展してしまうことも……。そんなことにならにならないように、『相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)の著者で相続の相談実績4000件超の税理士が、身近な人が亡くなった後に訪れる相続のあらゆるゴチャゴチャの解決法を、手取り足取りわかりやすく解説します。
本書は、著者(相続専門税理士)、ライター(相続税担当の元国税専門官)、編集者(相続のド素人)の3者による対話形式なので、スラスラ読めて、どんどん分かる! 【親は】子に迷惑をかけたくなければ読んでみてください。【子どもは】親が元気なうちに読んでみてください。本書で紹介する5つのポイントを押さえておけば、相続は10割解決します。
※本稿は、『相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

【要注意】遺産分割がうまくいく家・いかない家の決定的な違いPhoto: Adobe Stock

実印を押したら“やり直し不可”?
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【要注意】遺産分割がうまくいく家・いかない家の決定的な違い『相続専門税理士が教える 相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)より イラスト:カツヤマケイコ

■遺産分割協議の基本スケジュールとは?

国税 相続財産の分け方を決めるコツをお聞きします。あとからめんどうな問題が起きないように、上手な分け方を知りたいな、と。まずは、スケジュール感から教えてください。

前田 遺言書がある場合は、原則として遺言書で指定されたとおりに分けますが、遺言書がなければ「遺産分割協議」、つまり相続人同士の話し合いによって分けます。

遺言書に遺産の一部しか書かれていないときも、のこりの遺産は遺産分割協議が必要です。遺産分割協議は、一般的には四十九日が終わってからはじめることが多いです。

その後の名義変更の手続きや相続税申告などにかかる時間を考えると、できれば被相続人が亡くなってから6~8カ月以内を目安に遺産分割協議を終えたいところです。

無知 6~8カ月なんて、すぐに過ぎてしまいそうですね。

■話し合いを円滑に進める「まとめ役」の重要性

国税 たしかに。遺産分割協議をうまく進めるには、何がポイントになりますか?

前田 ズバリ、「まとめ役の人」を立てることがポイントです。基本的には、故人の一番近くに住んでいて、財産などの情報を把握している人がいいでしょう。もちろん、性格的にも信頼できる人がいいですね。

国税 私は実家のある福岡から離れて、埼玉で暮らしているので、実家の近くに住んでいる弟か妹にまとめ役をお願いしようと思っています。遺産分割協議は、通常1回で済むものなのでしょうか?

■もめない協議は「1回勝負」で決まる

前田 私が経験した限り、遺産分割協議で一番もめないパターンは1回で決める形です。まとめ役の人が遺産分割協議書の案を用意しておき、各自が実印と印鑑証明をもち寄って、その場でハンコを押して済ませるというやり方です。

逆に、「一度持ち帰って考える」というスタンスにすると、意見が変わる可能性があり、話しがまとまるまでに時間がかかってしまうことが多いです。事前の準備をいかにうまくやるかが肝心です。

無知 会社の会議と同じで、準備なしで集まったら無駄な時間を費やしてしまうのは想像できます。

■録音がトラブル防止のカギ

国税 私も、ある程度準備して1回で済ませるようにしたいと思います。遺産分割協議をするときは、その結果を遺産分割協議書にまとめますよね。その同意の前に、どんなことを話し合ったかを記録しておく必要はありますか?

前田 やはりボイスレコーダーで録音しておいたほうがいいと思います。メモなどで議事録を作る方法もありますが、やはりボイスレコーダーが一番確実です。

国税 あとから「言った」「言わない」となると大変ですからね……。遺産分割の話し合いがまとまってからの手順を教えてください。

■協議書はネットでOK!ただし「実印」に注意

前田 遺産分割協議書のフォーマットは決まっていて、ネットで「遺産分割協議書・ひな形」とキーワード検索をすれば、ひな形を無料でダウンロードできるサイトがいくつか出てきますから、それに合わせて書き込んでいきます。

遺産分割協議書に押す印鑑は「実印」でなくてはいけないので、実印がない人は事前に役所で印鑑登録を済ませておかなくてはいけません。

遺産分割協議書は、不動産や株式・預貯金などの名義変更の手続きで原本が必要になるので、相続人分作成しておくとよいでしょう。

無知 実印ですか。たしか自宅マンションを買ったときに作っていたと思います。遺産分割協議書に実印を押せば、遺産の分け方が確定するんですね。念のためにお聞きしたいのですが、あとで考えが変わったときに、遺産分割協議のやり直しは可能なのですか?

■やり直しはできるけれど「二度手間」に注意

前田 相続人が全員合意すれば、やり直しはできますよ。でも、二度手間ですし、けっこう時間をとられてしまいますよね。相続税の申告期限のことなどを考えると、やり直しは避けたいところです。

国税 申告期限後に遺産分割協議をやり直すと、税務署から贈与税が課せられる場合もありますから、避けたほうがいいですよ。

前田 だから、協議の内容に納得がいかないなら、最初から印鑑を押すべきではありません。これが最終結果と納得できたら、そこではじめて印鑑を押すようにしましょう。

誰が何をもらうのか? …「まとめ役」を立てることがポイント

POINT 遺産分割協議はまとめ役を立てて事前に分割案を用意しておくとスムーズ

※本稿は、『相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。