ベストセラー『「悩まない人」の考え方』著者の木下勝寿氏が「マーカー引きまくり! 絶対読むべき一冊」と絶賛する本がある。『スタートアップ芸人 ―― お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』だ。本連載では、共感&刺激だらけの本書を、起業家たちがどう読み解いたのかに迫る。今回のインタビューでは、スポーツテック分野で急成長を遂げる株式会社Focusの代表取締役・宮口翔氏に話を聞いた。宮口氏が本書で共感したのは「会食の際に短所を伝える」という、やや意外なコミュニケーションの取り方だ。
「人づき合いがうまい人」はなぜ“短所を先に伝える”のか。その理由と実践法について語ってもらった。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

信頼される人は「短所」を隠さない
――『スタートアップ芸人』では著者の森氏が「会食の際に短所を伝えるようにしている」と語っていましたが、宮口さんもこのやり方を実践されているそうですね。
宮口翔(以下、宮口):はい、実際にやっていますね。
たとえば取引先との初対面の場などで、「この担当、ちょっと口が悪いところがあるんですけど、頑張っているので見守ってやってください」と、あらかじめ伝えるようにしているんです。
――かなりストレートですね。伝えるタイミングはいつ頃が多いのでしょう?
宮口:最初の取引が始まる頃ですね。
担当者の名前が出たタイミングで、自己紹介の一部として短所も添えてしまう。
「この人、声が大きすぎるんですけど…」「ちょっと雑なところがあるかもしれませんが改善させます」と。あえて包み隠さずに伝えています。
――それを聞いた取引先の反応はどうですか?
宮口:担当者を“育てる”という目線で見てもらえるようになりますね。
結果的に、「うちの社員も頑張っているから、ぜひ一緒に育ててやってください」というスタンスが伝わるんです。
ウチのメンバーは必ずしも全員が即戦力というわけではありません。
でも、がむしゃらに頑張っている。その姿勢を見て、怒ってくれたり指摘してくれたりする関係を築けると、成長スピードも速いです。
――成長のプロセスを取引先と一緒につくっていくイメージですね。
宮口:そうです。だから正直に短所を伝えることで、結果的に信頼関係が深まる。
たとえば、レスポンスが遅いという指摘を受けた人が少し早く返せるようになると、取引先の方が「お、成長してるじゃん!」とほめてくれるんです。
そういう小さな成長の積み重ねが、顧客満足度にもつながっていきます。
――なるほど、社内の人材育成にも通じるアプローチですね。こうしたやり方は創業当初から意識されていたんですか?
宮口:はい。これは採用活動にも通じる話なのですが、ウチでは求人票に「良いこと」ばかりを書きません。
「ギャップで辞めるくらいなら最初から伝えよう」という考え方なので、できないことはできないと正直に伝えるようにしています。営業にも「正直に向き合え」と徹底して言っています。
ネガティブこそが、最強のブランディング
――その正直さが、取引先との関係にも活かされているんですね。
宮口:そうですね。実際、取引先の方から「正直でまっすぐな会社ですね」と言っていただくことも多いです。
だからこそ、長い付き合いに発展することも多くて。イベントに一緒に参加したり、飲みに行くような間柄にもなりやすいです。
――“正直に短所を伝える”というシンプルながら実践しづらい姿勢が、逆に信頼を生むのかもしれませんね。
宮口:『スタートアップ芸人』を読むと、こういう“リアルな実践”が、どうやって組織文化として定着していったのかがよくわかるんです。採用や育成に向き合っている企業や、これから社会に出る人たちにとっても、きっとヒントになる部分があると思いますね。
(本稿は『スタートアップ芸人 ―― お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』に関する書き下ろし記事です)