戦後何十年経ってもこうした価値観は継続し、お葬式と結婚式には、長らく見栄と世間体が重視されてきた。

 ところが、先祖の仕事を代々継承するというライフスタイルが減少し、いわゆる会社勤めの人が増えると、地域の人たちや仕事関係者に、お葬式の時に次の家長のお披露目をする必要が薄れた。その結果、お葬式が社会的な儀式ではなくなっているのだが、見栄や世間体の意識だけは残っている。

葬式の平均参列者数は10年間で38人と半減~ひとり死時代の死生観『〈ひとり死〉時代の死生観 「一人称の死」とどう向き合うか』小谷 みどり (著)
定価1,760円(朝日新聞出版)

 とはいえ、特に2000年以降、男女ともに死亡年齢の高齢化が進んでいる。90歳を超えて亡くなる人が多いということは、子ども世代も多くは60歳以上となっている。

 日本のことわざに「老いては子に従え」があるが、これからの時代は、「老いた時には、親族も子どもも高齢者」という時代だ。故人の友人も超高齢だろうし、故人の子ども世代もすでに定年退職するなどしており、社会とのつながりが少なくなるため、お葬式に参列する人が少なくなる。言い換えると、超高齢で亡くなると、必然的に家族や親族だけでのお別れになる傾向にあるのだ。

※朝日選書『〈ひとり死〉時代の死生観「一人称の死」とどう向き合うか』(朝日新聞出版)から一部抜粋

小谷みどり(こたに・みどり)
1969年大阪生まれ。奈良女子大学大学院修了。博士(人間科学)。第一生命経済研究所主席研究員を経て2019年よりシニア生活文化研究所代表理事。専門は死生学、生活設計論、葬送関連。大学で講師・客員教授を務めるほか、「終活」に関する講演多数。11年に夫を突然死で亡くしており、立教セカンドステージ大学では配偶者に先立たれた受講生と「没イチ会」を結成。著書に『ひとり終活』(小学館新書)、『〈ひとり死〉時代のお葬式とお墓』(岩波新書)、『没イチ パートナーを亡くしてからの生き方』(新潮社)など。

AERA DIGITALより転載