第四の鉄則は、スケジュールへの過度な固執を避けることである。大規模修繕には長期的な視点が不可欠であり、「急がば回れ」の精神こそが、結果的に最良の選択に繋がることも少なくない。計画の遅れを気にするあまり、検討や検証が不十分なままプロセスを急いでしまうと、後々、大きな問題へと発展する可能性もある。もしプロセスに疑問が生じたり、癒着が疑われるような状況になったりした場合には、一度立ち止まる勇気も必要となるだろう。
「うちは大丈夫」こそが危険
自らの手で資産価値を守るために
大規模修繕工事に潜む「構造的癒着」は、決してひとごとではない。その見えにくい性質ゆえ、どの管理組合においても、意図せず貴重な修繕積立金が目減りしてしまうケースも起こり得る。しかし、先に掲げた「4つの鉄則」のように、管理組合が主体的に関与し、透明性を追求するならば、そのリスクは大幅に減らすこともできるのだ。
管理組合には、自ら情報を収集し、プロセスに関与しながら、必要に応じて第三者の客観的な視点を導入する姿勢が求められる。こういった地道な取り組みこそが、マンションの資産価値を守るための確実な道筋となるのである。公取委の調査が業界全体の透明化を促す好機となることを期待しつつ、まずは管理組合自身が主体的に行動を起こすことが、誰もが安心して修繕工事を進められる未来への第一歩となるだろう。
(株式会社さくら事務所創業者・会長 長嶋 修)
さくら事務所公式サイト
https://www.sakurajimusyo.com/