将来的に5人に1人がなると言われている「認知症」。運や遺伝によってなると考える人も多いが、じつはそこには「糖尿病」や、その原因となる「糖」とも深い関係があることがわかった。その影響は20代から始まっているとも言う。
その事実を紹介したのが、オックスフォード大学の研究員として世界的難病の治療法の発見に貢献し、現在は医師としても活躍する脳と糖の専門家である下村健寿氏の著書『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』だ。認知機能を崩壊させる「黒幕」の正体や、そのメカニズム、そして脳を守るための習慣を紹介した同書から、一部を抜粋・編集し紹介しよう。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)
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「健康診断は正常だから大丈夫」という落とし穴
「血糖値は正常です」
「異常は見つかりませんでした」
健康診断でそう言われると、多くの人は安心する。
自分は糖尿病とは無縁だ。
まだ気にする必要はない。
そう思ってしまうのも無理はない。
しかし、その“正常”の裏で、見逃されている事実があるかもしれない。
元オックスフォード大の医学研究者であり、医師としても活躍する「糖と脳」の専門家である下村健寿氏は、著書『糖毒脳』で、若い世代にも起きている驚くべき事実を紹介している。
20代でも起きている「見えない高血糖」
本の中で下村氏は、医学生に対して行なったある実験を紹介している。
私は大学の学生実習で、医学生たちに「糖負荷試験」を体験してもらっています。
絶食後、一定量の糖分を含んだ飲み物を摂取してもらい、30分後、60分後、120分後の血糖値の変化を見る検査のことです。この実習では、通常は測定しない「糖負荷15分後」の血糖値も追加でチェックしてみました。
――『糖毒脳』より引用
すると、意外な結果が出た。
糖尿病と診断されてもおかしくないほどの高血糖を呈している学生が少なくなかったのです。
――『糖毒脳』より引用
対象は20代前半の若者たちだ。
それでも、一時的とはいえ糖尿病レベルの血糖値に達していた。
「無理をして正常を保っている」という危険な状態
さらに見逃せないのは、その後の変化だ。
さらに恐ろしいのは、摂取15分後の測定でこのような著しい高血糖状態にあった学生の多くが、摂取30分後の段階ではすでに正常な血糖値に戻っていることです。
――『糖毒脳』より引用
一見すると「問題ない」ように見える。
だが、ここに大きな落とし穴がある。
血糖値がすぐに正常に戻る。
それは決して“安全”を意味しない。
わずか15分の間に血糖値が正常化するということは、その間に膵臓から大量のインスリンが分泌されているということです。
――『糖毒脳』より引用
つまり体の中では、急激な高血糖を打ち消すための過剰なインスリン分泌という負担が繰り返されている可能性がある。
そして、この状態が続くと、やがてインスリンの効きが悪くなり、糖尿病へとつながっていく。
たとえ血糖値が「正常」と診断されても、それはインスリンの過剰分泌によって値が正常値に維持されているだけであり、体が一時的に高血糖にさらされている可能性も潜んでいるのです。
――『糖毒脳』より引用
これが、「検査で正常だから安心」と思い込んではいけない理由であり、糖尿病になりやすい人が見落としている「食習慣の落とし穴」だ。
(本稿は、『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』の内容を引用して作成した記事です)
福島県立医科大学卒。同大副理事、医学部病態制御薬理医学講座主任教授。現役内科医でもある基礎医学研究者。日本糖尿病学会東北支部学術評議員。日本内科学会認定内科医。医学博士。群馬県前橋市出身。2004年、日本で働いていた大学医学部から、英国オックスフォード大学への就職を試み、執念の就職活動を実らせて成功。オックスフォード大学正式研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授の薫陶を8年間受けた。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。新生児糖尿病の最重症型であるDEND症候群の脳神経症状治療有効例を報告した論文は米国神経学会誌「Neurology」よりEditorial論文に選出された。貢献を認められて2006年と2010年にオックスフォード大学メリット賞を2度受賞。日本帰国後は、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究している。








