
【ミカイ渓谷(コロンビア)】急拡大するコカインの流通経路の一つは、コロンビア南西部カウカ県の山岳地帯から始まる。この地域では、耕作可能な土地のほぼ全てでコカの葉が栽培されている。
セサール・ロセロさん(64)の約4ヘクタールの農地にはコカの木が整然と並び、1.8メートルの高さにまで成長した木もある。「この植物には本当に感謝している」と、ロセロさんは畑を歩きながら、鮮やかな緑の葉を優しくなでて語った。
ロセロさんら地元のコカ栽培農家は、自分たちの植物が害虫に強く、世界でおよそ2000万人ものコカイン使用者を引き付ける精神活性アルカロイド化合物の収量が多いと自慢げに語る。ロセロさんによると、乾燥コカ葉25ポンド(約11.3キログラム)の標準的な袋から生産できるアルカロイドは25グラム。かつては18グラムだったという。
「科学と技術が進歩したおかげで収量が上がった」と彼は述べた。
米国と国連の麻薬取締機関によると、コカインの供給量は世界的に過去最高水準にある。国連は昨秋、コロンビアの年間コカイン生産量を3000トンと推定した。これは取り締まりが最も厳しかった2012年の約8倍となる。
コロンビアにおける麻薬取り締まりの緩和に加え、コカの栽培拡大、サプライチェーン(供給網)の改善、強い消費者需要が相まって、コカイン取引は新たな高みに押し上げられている。
ミカイ渓谷および他の同様のコカ栽培地域14カ所は、コロンビアのコカイン生産量の40%を占めている。ここで収穫される作物は世界最高品質のコカインを生み出すだけでなく、生産量も増加している。ロセロさんは年に5回収穫している。昔は3回だったという。
国連薬物犯罪事務所(UNODC)は昨年、コロンビアのコカの栽培面積が約25万3000ヘクタールに達し、2000年と比べて55%増加したと報告した。コロンビアは2000年に米国と共同で「プラン・コロンビア」と呼ばれる麻薬撲滅プログラムを開始した。航空機から化学薬品を散布してコカの作物を枯らす積極的な取り組みだったが、世論の圧力を受けてコロンビアは15年にこれを終了した。