「地域横断×ファンド活用」で歴史ある町並みの保全・活性化を推進

「播磨の小京都」と呼ばれ、中世以降、城下町として栄えた歴史を擁す兵庫県たつの市の龍野地区。今も江戸初期に築かれた町割りが7割以上残り、18世紀中期から昭和初期までに建てられた町屋や武家屋敷、寺院などが並ぶ。この歴史的価値の高い町並みや建造物を生かした観光客や交流人口の増加、地域活性化を狙いとする、独自のまちづくりが注目を集めている。一連の取り組みのハブ企業となっているのが龍野みらい舎だ。(取材・文/大沢玲子)

 同社は2022年に発足し、23年末に株式会社化。同社が発足する契機となったのが、「19年、龍野地区の一部が、国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選定されたことでした」。同社代表取締役・真田忠敏氏はそう振り返る。

「地域横断×ファンド活用」で歴史ある町並みの保全・活性化を推進代表取締役・真田忠敏氏

 醤油やそうめん、レザーなどの産業が興隆し、揖保(いぼ)川舟運の拠点としてにぎわいを見せていた同エリアも、近年では少子高齢化や人口減少で空き家や空き店舗が増加。こうした状況に危機感を抱き、市民出資のまちづくり会社・緑葉社代表取締役の畑本康介氏は、早期から同地区で古民家の再生・保存、テナント誘致を進めてきた。畑本氏は「まちおこしを円滑に進めるには民間企業だけでは限界があります。行政との連携に加え、何よりこの地に住む生活者の方々の理解や配慮を大事に事業を進めてきました」と言う。

重伝建選定を好機に
目指すまちの姿を策定

 そこで、重伝建選定を好機とし、あらためて目指すまちの在り方について住民、地域の団体、有識者らで検討。たつの市として「ほどよく賑(にぎ)わいがあり生活と観光が共存するまち龍野」をテーマに、22~36年までの『龍野地区まちづくりビジョン』を策定する。

 さらに地域の自治会や商店会、観光協会の長の有志にて同社を設立。同地区連合自治会長の真田氏が代表に就いた。

「個々に活動していた地域事業者や行政とのパイプ役となり、古民家を活用した新規出店や助成金活用などの地域側に立った支援、行政側からの提案実現のための実働部隊として、広く業務を推進しています」(真田氏)