
龍野地区のまちづくりのポイントは大きく二つ挙げられる。一つ目が同社を核に地域横断で町並み保存やイベント運営などを進めている点だ。23年からは、龍野みらい舎と商店会や町並み保存会などの地元団体が連携し、重伝建周辺の飲食店巡りを楽しむ「龍野城下町バル」を開催。「観光客の他、地元の方々の新たな魅力ある店の発掘につながるいい機会となっています」と真田氏は言う。
二つ目が、24年3月、西兵庫信用金庫と一般財団法人民間都市開発推進機構(MINTO機構)の出資により設立した「にししんまちづくりファンド」の活用だ。同ファンドは建物のリノベーションなど施設整備事業を対象とする。
保存指定建物を改装し
古民家ホテルをオープン

龍野地区の宿泊施設は数少ない。また、築年数の古い古民家への融資のハードルが高いという課題から、同ファンドと観光庁補助金を活用した古民家の再生事業として、緑葉社と連携。保存指定建物を改装した1棟貸しホテルとテナント1室の誘致を実践し、25年5月にオープンした。
同ファンドは、同地区に加え、姫路市網干(あぼし)地区、宍粟(しそう)市山崎地区も対象となり、「他エリアの事業会社や行政とも連携しながら、周遊効果につなげる取り組みも進行しています」と真田氏。地元企業とのつながりも深めていきながら、「観光客の方々、地元の方々に喜んでいただきつつ、会社として収益向上にもまい進していきたいと考えています」と意気込む。
観光産業においては、旺盛なインバウンド需要に沸く一方で、オーバーツーリズムによる地域住民への負荷も指摘される。今あるまちの魅力を大事に、持続可能な地域活性化をいかに実現していくか。まちづくりの資金問題のファンド活用モデルとしても参考にしたい。
(「しんきん経営情報」2024年6月号掲載 協力/西兵庫信用金庫)