日本人にとって英語が難しいのと同様に、アメリカ人の学習者が日本語を学習するのはものすごく大変です。それに比べて、アメリカ人がスペイン語とかフランス語を学習するのはずっと楽です。
アメリカ国務省の外交官養成機関であるForeign Service Instituteの1985年の資料によると、アメリカ人が日本語をかなりのレベルで使えるようになるのには、アメリカ人がスペイン語をかなりのレベルで使えるようになるまでの時間の倍以上かかるということです(表1)。

日本人は文法が似ている
韓国語ならすぐ上達する
では、日本人が学びやすい言語はなんでしょう。
語族的には、日本語の起源はいまだはっきりせず、アルタイ諸語の1つであるとか、オーストロネシア語族であるとか、両者の混合であるとか、諸説があります。ただ、似ている言語といえば、なんといっても韓国(朝鮮)語です。文法が驚くほど似ています。
韓国ドラマのブームで韓国語を学習する人が増えたようですが、韓国語なら、英語よりも少ない学習時間である程度使えるようになるという予測ができます。
それから、中国語は、音声、文法に関しては有利でなくとも、多くの漢字・漢語を共有しているため、語彙の習得がかなり楽になることが予測されます。ただし、これらの予測について、実際にやさしいのかどうかを比較した実証研究は、今のところありません。
その逆を調べた調査はあります。カーネギーメロン大学の甲田慶子は、日本語学習者を韓国語、中国語、英語の3つの母語グループに分けて比較しました。
すると、初期の段階ですでに、英語話者は韓国語話者・中国語話者に差をつけられて、しかもこの差は学習が進むにつれてさらに広がる、という結果が出ています。
このように、母語と対象言語のあいだの距離によって、習得難度はかなり決まってくるのですから、日本人は英語ができないことを恥じる必要はそれほどないといえます。
第一言語からの第二言語に
対する影響「言語転移」
このような、第二言語習得における母語の影響は「言語転移」もしくは「言語間における影響」とよばれています。簡単にいえば、第一言語からの第二言語に対する影響です。