
一般的に、第二言語の学習は若ければ若いほど成功しやすいとされている。しかし、ある統計によると、英語学習において中国人や韓国人などのアジア系には年齢の影響はあったものの、ロシア人などのヨーロッパ系は年齢の影響はなかったというのだ。このデータから著者が推測する「自意識と外国語」の関係とは――。※本稿は、白井恭弘『新版 外国語学習に成功する人、しない人──第二言語習得論への招待』(岩波書店)の一部を抜粋・編集したものです。なお、
「外国語学習は若いほど有利」
とよく言われるけど、本当なのか?
一般的には、「外国語学習は若いほど有利」というのが、いわゆる常識的な理解でした。
ところが、第二言語習得研究者がデータを集めて検討したところ、もう少し洗練された一般化が出てきました。それは、子どもと大人とを比べた場合には、「大人のほうが速いが、子どものほうがすぐれている(Older is faster, younger is better)」というものです。
つまり、大人のほうが、自分のもっている認知能力を使って短期的には素早く学習することができる。
ところが、何年も経ってくると、若いときに始めた人のほうが、より母語話者に近い外国語を身につけるようになる、ということです。
また、「外国語」とひとくくりにするのではなく、個々の言語領域に異なった臨界期がある、という立場をとる研究者もいます。たとえば、発音に関しては、6歳までが臨界期だという立場もあります。
年齢は「外国語習得の成功」
に影響を及ぼすのか?
第二言語習得研究者のあいだでは、習得が成功するかどうかに年齢の影響が強い、という点についてはほぼ意見が一致しています。