債券市場から米政府に警告 「支払いはこれから」Photo:Anadolu/gettyimages

 今回の 債券市場の混乱 を整理してみよう。10年物米国債の利回りは4.55%と年初の水準に戻っており、2023年秋に付けた5%を依然として下回っている。

 つまり先週の米国債利回りの上昇(価格の下落)は、パニックや危機の前兆、あるいは貸し手のストライキを示すものではない。

 だがこれは重要な出来事であり、金融市場で何か根本的な変化が起きたことを示す証拠がまた一つ増えた。過剰な貯蓄が少なすぎる債券を追い求める新型コロナウイルス流行前の時代は終わった。各国政府は債務に以前より高いコストを支払わなければならず、巨額の財政赤字の危険は増している。

 このトレンドは世界的なものだが、米国は特に大きな部分を占める。年間の財政赤字が2兆ドル(約285兆円)を超え3兆ドルに向かう可能性が高い上、ドルの準備通貨としての地位が損なわれる可能性もあるためだ。

 何が起きているかを理解するためには、個々の債券を超えて市場を掘り下げ、さまざまな債券がどのように相互に作用しているかを見る必要がある。

 債券に最も大きな影響を与えるのは、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利の行方だ。もしそれが今市場を動かしているのであれば、2年物米国債利回りに最も顕著に表れるだろう。しかし、ドナルド・トランプ米大統領がほぼ全ての国に対して関税の大幅引き上げ(後に一部撤回)を発表する直前の4月2日以降、2年債利回りはわずか0.1ポイント上昇したに過ぎない。対照的に10年債利回りは0.35ポイント、30年債利回りは0.5ポイント上昇している。