
ビジョンや速さ重視の偏った政権運営
経済安定や国際秩序は関知せず!?
第2次トランプ政権が発足して約100日余りがたった。
「米国第一」のもとで相互関税に象徴される関税引き上げ政策は世界の貿易や経済を一気に不透明なものにし、株式など金融市場の不安定化を強めた。パリ条約やWHO(世界保健機関)からの一方的離脱、ウクライナや欧州の頭越しに、侵攻した側のロシアの思惑や利害を尊重するように停戦交渉を進める状況は、国際秩序の崩壊すらも関知しないかのようだ。
国内政策でも、バイデン前政権の環境政策の大転換、そして移民の国外強制送還に早々に手を付け、国内の分断深刻化よりも自らの支持層から喝采を受けることを重視している。
この間の政策の成果に関する分析、評価はさまざまだが、政策の実施の方法や政権運営を振り返ってみると、顕著な特徴がある。
この政権は他との衝突や分断を恐れない。先例がなく影響の計り知れない政策を打ち出す。判断が早く、動きも迅速だ。過去の経緯や現状よりも変化や新しさが、安定性や信頼性よりも効率性や即応性が重視される―といったことだ。
なぜ、そうなるのか。この政権は経営学における組織論で言うところの「リード」(経営者の仕事の中で組織を取り巻く環境などの変化に対応する部分)が先行、「マネジメント」(綿密な計画立案や予算確保、組織構築などの複雑さに対応する部分)が追い付いていない状態にあるからだ。
本来、組織にはこの両方がバランスよく備わっているべきだが、この極端な「偏り」がトランプ政策の不確実性や不安定の原因といえる。
トランプ政権のこの“危うさ”がどう克服されるかが、世界経済や国際社会の安定にとっても大きな鍵になるだろう。