おじさんだけじゃない。マダムも女子もイケメンもやっている

 周りにも聞き込みを開始したところ、最近ではおじさんやお兄さんだけじゃない。オホホマダムも、オシャレ女子も、さらにはまあまあイケメンまでもが、電車内でスマホに熱中しながら堂々と「ほじり行為」を敢行しているという目撃情報が続々と報告されたのである。

「40代後半くらいの華奢なマダムが隣に座って、携帯で男性アイドルグループの名前と“熱愛”を検索したかと思うと、記事を読みながら鼻掃除をして、まあまあ小さくない塊を手首になすりつけ、乾いてからそっと床に落としてたのを見て、ショックで具合悪くなった」(50代男性)

「バンドマン風のおしゃれ男子が、片手にスマホ、もう片方の人差し指で、あろうことか……!まあまあカッコいいのに、一気に株が下がっちゃいましたよ」(30代女性)

「この前、ピンクのネイルがキラキラした指で鼻の中をごそごそしてる若い女の子を見てしまって、あのネイル、次はどこに入るんだろう……って笑っちゃって。そりゃ人間だから鼻くらいほじるかもだけどさ、人前でやっちゃうのにびっくり」(40代女性)

 ネットを探ると、同様の目撃談が出てくる出てくる。どうやら彼ら彼女らは、スマホに没入するあまり、全く周りを気にせずに「素でやってる」ようなのだ。スマホの画面を見る手と、もう一方の手で無意識にほじるという「新しい習慣」は、現代日本の新たな風景になりつつあるのだろうか……。

 私の遠い記憶では、かつて昭和時代の幼稚園や小学校において、このような行為は即「えんがちょ」対象だったものだ。しかしかつての禁断の行為が、今や堂々と公共の場で行われるようになった背景にはいったい何があるのだろう。これは公共マナーの崩壊か、それとも新しい日常なのか?

公私の境界に異変が起きている?

「えんがちょ!」「バイキン!」

 人権教育という言葉が存在しなかった昭和の小学校では、教室内で誰かの鼻ホジが発覚しようものなら、即座にクラスメイトからこんな容赦のない言葉が投げつけられたものだ。今や死語で若い人は知らないかもしれないが、世界基準からは潔癖と呼べるほどの衛生観念と、悪名高い同調圧力とでキツく束ねられた、あまりよろしくない過去のニッポンの姿でもあった。

 だがそれくらい、公共の場での「ほじり行為」は単なるエチケット違反を超えて強力なタブーであり、その後の同窓会でも「あの子さ~」と末代まで語り継がれる勢いの恥だった。しかし今や、電車内での化粧や通話、食事に続いて、ついに「ハナホジ」までもが市民権を得つつある、のか……?