確かに披露宴は私的なイベントで不特定多数に向けられたものではありませんが、多くのゲストを招いて一緒に音楽を聴く以上、それは既に著作権法上の「私的利用」(30条1項)に当たると考えることはできず、使用には著作権者の許諾が必要ということになってしまいます。

 また、JASRACの側も良き日を迎える2人を祝福する趣旨で(かどうかは明記されていないのでわかりませんが)、ウェブサイト上から比較的手軽に楽曲利用申請ができるフォームを用意してくれています。

 これは、事業者(式場等)が申請する場合のほか、個人(新郎新婦)から直接申請する場合にも対応しています。

CDを買うよりよっぽど高くつく
JASRACからの請求額

 肝心の使用料ですが、例えばプロフィールや余興のビデオでの使用(複製)を個人で利用申請する場合、使用の仕方によって若干異なり、動画内の使用は2000円、静止画・BGMでの使用は1000円、静止画での使用でも歌詞の字幕表示を伴う場合は1500円となります(2024年4月1日以後)。

 なお、これらは使用する1曲あたりの値段ですから、動画内で3曲を使用する場合は6000円の使用料支払いが必要です。

 また、生演奏ではなく市販音源を利用する場合には日本レコード協会の許諾を得ることも必要です。

 これらは個人利用(非商用利用)の場合のお値段であって、会場や音響・映像事業者が製作する場合(商用利用)はそれぞれ倍の金額になります。

「CDを買うよりよっぽど高くつくじゃないか」と思うかもしれませんが、おそらく音楽著作権管理の業界も原油高や原材料費高騰の影響と無関係ではいられず著作権使用料も高額化を避けられないのです(事実、楽曲は年を追うごとに忘れられシーンでの注目度も低下していくのが一般的ですが、近年、年を追うごとにこうした使用料の額は増額の一途をたどっています)。

 JASRACは悪質な事案には民事上の差止めや賠償請求と併せて著作権侵害での告訴もしっかり行います。「式でこっそり使ってもバレないんじゃないか?」という安易な考えは危険です。