もっとも、現在は無許可使用には式場の側からストップがかかるのが普通ですし、大手の式場はいまどきJASRACと包括的な利用許諾契約を結んでいることが多いので、使いたい曲を伝えると、利用申請や使用料支払いの手続も行ってくれるはずです。つまりお2人の前には著作権的にもきちんと明るい未来が開けているというわけです。

 おめでたい席だからこそ、こうした著作権周りのクリアランスはきちんととり、笑顔の絶えない素敵な家庭を築いていただきたいと思います。

これから結婚式を迎える
2人に提案したい対抗手段

 どうしても著作権使用料の支払いに納得できないという新郎新婦のお2人には、筆者から2つの解決策を提案したいと思います。

 まず1つは、新郎新婦だけがヘッドフォンでお気に入りの音楽を聴きつつ式を進めるという方法です。主役2人は自分たちだけの没入感をもって気分をさらに盛り上げることができますし、買ったCDを2人だけで聴くのならギリギリ「私的利用」の範囲と考えることも可能ではないかと思われ、うっかり口ずさんだりしない限りJASRACもまあ大目に見てくれるのではないかと思います。

 ゲストが曲を聴けないという問題は残りますが、関心の大半は友人の結婚相手の素性と料理に注がれていることが多く、さほど支障があるとは思えません。

 もう1つは、JASRACが管理する楽曲を使用せずに、式の最初から最後まで自作の曲で通すというものです。ここは新郎が新婦のために心を込めて作った自作のラブソングが穏当かつ適切です。

書影『世にもふしぎな法律図鑑』(日本経済新聞出版)『世にもふしぎな法律図鑑』(日本経済新聞出版)
中村真 著

 これは考えうる限り、著作権侵害を完璧にクリアする最良の方策であり、JASRACも手が出せません。

 音楽使用による著作権使用料の話は葬儀の場でも問題となります。例えば、葬儀で故人が愛した曲を流すことは多いですが、葬儀を葬儀場で行う場合(身内だけの参列で行う「家族葬」も含みます)には、やはり楽曲の利用申請と使用料の支払いが必要です。

 結婚式では個人の利用申請ができましたが、葬儀では故人の利用申請は不可能ですから、この場合は葬儀場の事業者が申請することになります(こちらも大手事業者であればJASRACと包括利用許諾契約を結んでいることが多いので、式場に問い合わせてみるとよいでしょう)。

 一方、自宅で執り行われる葬儀は非営利とされ、使用者(喪主)の使用料支払いは原則不要とされます(著作権法38条1項)。